バイオリンのマメ知識
チェロの名曲-協奏曲編 II

19世紀に書かれたチェロ協奏曲で現在人気がある作品は、チェロ奏者ではなかった作曲家によって書かれたものが多いようです。巨大編成のオーケストラと向かい合い、朗々と旋律を歌い上げるというチェロのイメージは、ロマン派の協奏曲から生まれたものではないでしょうか。

この作品は、チャイコフスキーの学生時代からの友人だったチェロ奏者、ヴィルヘルム・フィッツェンハーゲンのために書かれました。作曲にあたってチャイコフスキーは、フィッツェンハーゲンの助言を受けましたが、このチェロ奏者が後になってチャイコフスキーに無断で作品に手を入れてしまい、この改変版のほうが現在では一般的になってしまっています。18世紀中頃に流行オたロココ様式に従って書かれた主題をもとに、チェロの歌心と名人芸が繰り広げられる変奏となります。最近では、チャイコフスキーのオリジナル版による演奏も行われ、本来の姿が知られるようになっています。

おそらく、最も有名なチェロ協奏曲はこの作品ではないでしょうか。友人のチェロ奏者でプラハ音楽院の同僚だったハヌシュ・ヴィハンとの会話からヒントを得て、この協奏曲を書き始めました。しかし、全曲の完成はニューヨーク時代の1895年でした。初演は翌年にロンドンで行われましたが、独奏を担当したのはレオ・スターンというチェロ奏者です。故郷ボヘミアの民謡や黒人霊歌などに触発され、美しい旋律を惜しげもなく披露するドヴォルザークの個性が全編にわたって表れています。

アントニン・ドヴォルザーク(1841~1904) フーゴー・ベッティンガーのデッサン

アントニン・ドヴォルザーク