バイオリンのマメ知識
スチール弦か、ガット弦か、それが問題だ

バイオリンなどに使われる弦は、現在では一般にスチールを素材としたスチール弦(最近ではナイロン弦も)が使用されます。しかし、スチール弦が使用されるようになったのは20世紀も半ば近くになってからでした。それまでは、羊の腸の筋をよって作ったガット弦が広く用いられていたのです。
スチール弦は19世紀の末から知られていましたが、広く普及するまでに多くの時間が必要でした。特に1920年代前後には、演奏家の間でスチール弦か、ガット弦かという優劣論争が繰り広げられました。ガット弦特有の柔らかい響きを重視する演奏家がいる一方で、より力強い音が可能でしかも耐久性の面で特性を発揮するスチール弦の優位を主張して止まない演奏家もいたのです。しかし、音量と耐久性の面で特性を発揮するスチール弦に軍配が挙がったのはその後の歴史に見る通りです。
ところが、作品の作られたものと同様な楽器で演奏する、いわゆるオリジナル楽器の演奏家が増えてきた現在では、ガット弦の復権にも目覚ましいものがあります。古き良き時代の音を髣髴とさせるガット弦の良さが再び注目されてきたのです。