バイオリンのマメ知識
バイオリンのf字孔は、昔はC字形やS字形だった

バイオリンの胴の中ほどに左右対称にあいているf字形の孔はf字孔とよばれ、胴の共鳴によって起こる胴内の空気振動を外気に伝えて、豊かな音として響かせる働きをしています。バイオリンより古いビオラ・ダ・ガンバ属の楽器では主にC字形の孔があけられていましたが、バイオリン属が現れた16世紀以後も半月形や火炎形、S字形などさまざまな意匠のものが造られました。

現在のf字形に次第に統一されるようになったのは、バイオリン属がほぼ完成する18世紀の初め頃から。当時の製作者が胴に駒を立てる位置を示すために、S字形にくりぬいた孔の中央部にたまたま刻み目をつけたのが、f字孔の始まりといわれています。
(参考資料:黒沢隆朝「世界楽器大事典」雄山閣刊)