バイオリンの成り立ち
バイオリンの発展

16世紀後半から18世紀前半にかけて、北イタリア ロンバルジア地方の小都市クレモナはバイオリン製作の中心地になり、約2万個の名器が作られました。そしてクレモナのバイオリン製作家は家ごとに一派を成し、その技術は代々受け継がれたのです。最も有名な製作家の名前を挙げると、アマティ一族が5人、ストラディヴァリ一族が3人、グァルネリ一族が5人。他にもカルロ・ベルゴンツィ作のバイオリンは名器として知られています。
これらのバイオリンは現代にいたるまで一流のバイオリニストに弾き継がれ、今でも有名なバイオリニストの多くが、このクレモナの名器を愛用しているのです。

クレモナのバイオリン製作家のマーク

クレモナのバイオリン製作家のマーク

ストラディヴァリ(左)とグァルネリ(右)

ストラディヴァリ(左)とグァルネリ(右)

アントニオ・ストラディヴァリとグァルネリ・デル・ジェスは、ほとんど同じ時代にクレモナで活躍したバイオリンの名工で、どちらも史上最高の製作家と呼ばれ、今も彼らの作った名器が珍重されています。けれども彼らの楽器を比べてみると、音の性格はかなり異なっているようです。
アントニオ・ストラディヴァリは1644年ごろ生まれて90歳過ぎまで生き、最晩年までバイオリンをはじめとする弦楽器を製作していたといいます。推定製作本数は約1100本。現在、バイオリンをはじめ、ビオラ、チェロ、マンドリン、ギターなど含め約600本が残っていますが、これは1人がつくった数としては驚異的です。彼の楽器は隅々までていねいに作られていて、華々しく艶(つや)のある音が特徴です。
一方、グァルネリ・デル・ジェスは1698年から1744年の生涯を破天荒に生きた人。お酒もよく飲み、刑務所に入ったこともあると伝えられています。製作本数は推定約300本で、そのうち約140本が現存しています。彼のバイオリンは、作りも荒々しく、エネルギッシュで深い、迫力のある音がするんですよ。

バイオリンは誕生した時にすでに完成された姿をしていました。そのためその後の改良もごくわずかです。その改良というのは、19世紀に、時代の流れに対応するために行われたもの。ひとつは指板を胴の中央まで長くしたこと。これは特にE線の高音をもっと多く弾けるようにするためでした。もうひとつは、音量と輝かしさを増すために、駒を高くし、同時に指板の位置も高くして、弦の張力を増すようにしたこと。
古い名器にこの改良を加えた楽器や、それを真似て新しく作った楽器を一般に「モダンバイオリン」、そうした改良を加えない、古いかたちのままのものを「バロックバイオリン」と呼んでいます。現在では、ストラディヴァリやグァルネリの名器でも、ほとんどすべてがモダンバイオリンになって使われています。

バロックバイオリン

バロックバイオリン

バロックバイオリンとモダンバイオリンの比較図

バロックバイオリンとモダンバイオリンの比較図