バイオリンのマメ知識
バイオリンのニスのほとんどは医薬品でもある

バイオリンの胴に塗るニスは、「その楽器の音を決定する」といわれるほど、音色に大きな影響を及ぼします。古来、さまざまなニスがバイオリン製作者たちの秘伝として用いられてきましたが、不思議なことにその素材のほとんどは医薬品でもあるのです。
たとえば、赤色塗料のドラゴンブレッド(麒麟血)はヨーロッパでは止血剤として使われてきましたし、黄色塗料のガンボーグ(藤黄、雌黄)は緩下剤、茶染料のアロエ(蘆薈)は強壮剤、ガンビイル(阿仙)は口中清涼剤として知られています。さらに、ミルラ(没薬)は鎮痛剤、ベンツオエ(安息香)は去痰薬、咳止め。ペルーバルサム、トルーバルサムは皮膚病薬、蜜蝋は下痢、赤痢に、コーパルやダンマーのような樹脂は膏薬に使われてきました。もっとも、これらの中には本当に薬用効果があるのかどうか疑わしいものもあるようですが…。
(参考資料:読売新聞社発行「楽器の世界」所収 無量塔蔵六「ヴァイオリンとニスの秘密」)