オーボエのマメ知識
オーボエの名曲‐協奏曲編

オーボエが独奏楽器として最も華やかに活躍したのは18世紀のこと。この時代には多くの優れたオーボエ奏者が現れ、彼らのほとんどは作曲家でもあったので、オーボエのための独奏曲がたくさん生まれました。19世紀以降は、楽器自体が改良されてゆき、それに伴って新しいタイプの演奏家も登場しますが、現在でも定番と言えるようなオーボエ協奏曲はそれほど多くありません。

映画「ヴェニスの愛」で使用されたことで、一躍有名になった作品。作曲者はバロック時代のイタリアの作曲家アレッサンドロ・マルチェッロです。映画の中でも流れた第2楽章は、静かな弦楽オーケストラの伴奏にのって静かに漂うような旋律を演奏するオーボエが、たいへんロマンティックで、印象的です。この協奏曲は、オーボエのために書かれた最初の協奏曲の一つとされています。

アレッサンドロ・マルチェッロ)

アレッサンドロ・マルチェッロ(1684~1747)

古典派時代の、いや古今を通じて最も人気のあるオーボエ協奏曲といえば、この作品でしょう。ところが、たいへん有名な作品にもかかわらず、この協奏曲はようやく20世紀になってから楽譜が発見され、演奏されるようになったのです。音楽自体は同じモーツァルトのフルート協奏曲第2番と同一ですが、どちらが先に書かれたのかははっきりとわかりません。伸びやかな歌心に溢れた旋律と華やかな技巧を聴かせるパッセージが見事に両立した、モーツァルトらしい作品といえるでしょう。

この作品は、1945年の秋にスイスで作曲されました。この年に終結した第2次世界大戦は、リヒャルト・シュトラウスの人生にも暗い影を落としました。しかし、この協奏曲は美しい旋律と穏やかさに溢れており、老境にあったシュトラウスが、古き良き時代を懐かしむかのような、一抹の寂しさも加味されているのです。時代は既に前衛音楽の時代でしたが、この協奏曲はあくまでも優しく、聴く人の心を包んでいきます。