オーボエの成り立ち
オーボエ誕生ストーリー

オーボエは、2枚のリードを使って音を出す、ダブルリードの楽器です。ダブルリードの楽器の歴史はたいへん古く、古代エジプトの壁画にもそうした楽器(葦笛)が描かれています。
その後、ダブルリードの楽器は野外楽器として発展し、世界中に広まって行きました。そのひとつがトルコのズルナという楽器。これがヨーロッパにも伝わり、オーボエの先祖になったといわれています。

ズルナ

ズルナ

ズルナのリード。これだけでも大きな音が鳴る

ズルナのリード。これだけでも大きな音が鳴る

オーボエのリード

オーボエのリード

ズルナのリードの音を、オーボエのリードの音と聴き比べてみましょう。
ズルナのほうは、たいへん荒々しく大きな音で、いかにも野外向きです。それに対してオーボエは、まろやかで落ちついた音になっています。オーボエは室内楽向きに改良された楽器なのです。

オーボエが誕生した正確な時期はわかりませんが、おおよそのところで、17世紀の中頃にフランスで生まれたといわれています。もちろん、葦笛のようなダブルリードの管楽器はそれ以前にもヨーロッパで用いられていました。中世からルネッサンス期に使われていたショームという楽器なども、オーボエの先祖と考えることができます。
オーボエHautboisという名称は、高い音、大きな音の木を表すフランス語で、英語やイタリア語のoboe、ドイツ語のOboe、Hoboeなど、他の言語でもこのフランス語に基づいています。

2鍵オーボエ 1680年頃

2鍵オーボエ 1680年頃

初期のオーボエは、キイが2つ~3つしか付いていない簡単なものだったため、すべての半音が簡単に吹奏できるわけではありませんでした。しかし、18世紀末になってそれ以上のキイを持つ楽器がつくられ始め、すべての半音が安定して得られるようになったのです。

22鍵オーボエ 1680年頃

22鍵オーボエ 1680年頃

17世紀のフランスに登場したオーボエ。その後、そこから進化したドイツ式のオーボエがヨーロッパ中に広まりましたが、19世紀の終わりにフランスで画期的なメカニズムのオーボエが生まれて状況は大きく変化。フランスで開発された新しいシステムはコンセルヴァトワール式と呼ばれ、現在のオーボエの主流となっています。

19世紀末のオーボエ界はドイツ式とフランス式が並び立っていました。その状況を一変させたのは、一説では、ドイツの有名な作曲家兼指揮者だったといいます。20世紀初めのこと、リヒャルト・シュトラウスが「フランス式の方が好きだ」と宣言したことで、一気にフランス式の勢力が伸びたというのです。
その後、ドイツ式はウィーン近郊でのみ愛されるようになり、やがてウィンナーオーボエと呼ばれるようになりました。写真はオーストリアのウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が使っているウィンナーオーボエです。

ウィーンで活躍しているウィンナーオーボエ

ウィーンで活躍しているウィンナーオーボエ