ホルンのマメ知識
ホルンの名曲-協奏曲編

6曲からなる「ブランデンブルク協奏曲」は、バッハがバロック時代の協奏曲の多様性を追求した名作で、各曲に多彩な独奏楽器が使われています。第1番は3本のホルン、リコーダー、ヴィオリーノピッコロ(小型のバイオリン)が独奏楽器です。3本のホルンは狩猟用のホルンのような音型を演奏したり、難しいゲシュトップ奏法でなめらかな旋律を吹いたりと、バロック時代における最新のホルンの使用法が多く見られます。バッハは「ミサ曲ロ短調」など、他の作品でも魅力的なホルンパートを書いています。

古典派時代の協奏曲といえば、誰もがモーツァルトの作品を思い浮かべるでしょう。彼のホルン協奏曲は4曲が知られていますが、その中で最も名高い曲は第3番です。モーツァルトらしいなめらかな旋律がふんだんに盛り込まれているだけでなく、速吹きの場面も要所に組み込まれており、コンパクトながら内容の濃い名曲と言えます。ウィーンにはたくさんのホルンの名手がいたからこそ、モーツァルトはこのような見事な協奏曲を書こうと思い立ったのでしょう。どの作品をとっても、とてもナチュラルホルンのために作曲されたとは思えないほどです。第1番も名曲として知られています。

1806年、ドイツのカールスルーエにあった宮廷楽団のホルン奏者ドトルヴォのために作曲されました。オペラ「魔弾の射手」でロマンティックな森の情景の演出にホルンを巧みに使ったウェーバーらしく、この作品でも独奏楽器としてのナチュラルホルンの魅力を十分に引き出しています。この曲における最大の聴きものはカデンツァ。ウェーバーは何と重音奏法を要求しているのです。管楽器で同時に2つの音を出すには、ハミングしながら吹奏する高度な技術によって可能になります。

カール・マリア・フォン・ウェーバー

カール・マリア・フォン・ウェーバー

リヒャルト・シュトラウスは、父親のフランツがミュンヘン宮廷楽団のホルン奏者だったこともあって、ホルンをこよなく愛し、オーケストラ作品でも重要な役割を持たせています。ホルン協奏曲は2曲ありますが、第1番は彼が19歳の時、父親のために書いたものです。後年の作品にくらべれば、保守的な作風とも言えますが、当時の最先端を行くワーグナーの様式も部分的には取り入れ、意欲的な協奏曲と言えます。バイロイト音楽祭にも招かれたほど、フランツの腕前は評判が高かっただけに、当時のホルンのための高度な技術が要求されています。

リヒャルト・シュトラウス

リヒャルト・シュトラウス