ホルンのお手入れ
お手入れの基本

楽器の表面のお手入れは、ポリシングクロスなどの柔らかい布を用い、手の届く範囲で、汚れや指紋などの人間の油分をふき取っておきます。

ホルン、チューバなどロータリー部分にはそれぞれの目的に応じて「ローターオイル」「ロータースピンドルオイル」「レバーオイル」の3種類のオイルを使い分けます。
また、抜差部にはスライドグリスを使用します。(スライドクリームではありません)
オイルは可動部品の潤滑をよくし、ノイズを押えたり、磨耗を防いだり、さびの発生を押えたりするものです。部品の可動部分のスキマの大きさ(クリアランス)とその部品の果たすべき役割に応じて、適切なオイルが変わってきます。瞬間的にはどのようなオイルを差しても、差してさえあれば問題ないように思えるかもしれませんが、長期的には、不適切なオイルは望ましくありません。

3種のオイルの役割

  1. ローターオイルは、ローター表面とケーシングの間の潤滑材です。比較的部品が大きく、その割にクリアランスが小さいため、粘度の低いオイルを使用します。
  2. スピンドルオイルは、ローターの軸用です。直径が小さく、また外気、呼気に触れにくい部分であり、かつローターの回転を支える軸になっているため、やや粘度の高いオイルになっています。
  3. レバーオイルは、レバーの軸や関節部などに使用します。一方向に押される力がかかり、片減りしやすい場所であるので、かなり粘度の高いオイルとなっています。

ローターオイルは粘度が低く、乾きやすいため、ローターの軸やレバー軸に差しても、あまり効果がありません。レバーオイルのような粘度の高いオイルをローターの中に差すと、当然動きが悪く(遅く)なります。
オイルと楽器の部品の性質、そしてそのときの状況を十分把握した上で、あえて意図的に使い分けるのでなければ、それぞれ、ローターオイル、スピンドルオイル、レバーオイルを差すべき場所に差してください。そうすることで不要なトラブルを未然に防ぎ、楽器を長持ちさせることが期待できます。

その他のお手入れ用品

3種類のオイルのほか、マウスピースの中を洗うマウスピースブラシや吹込管の中の汚れを取るフレキシブルクリーナか専用スワブ、抜差管用のクリーニングロッドなどがあればよいでしょう。

  1. 抜差管を抜いて図のようにローターオイルをローターに注油しましょう。
    • 抜差管を抜くときは必ずレバーを押しながら抜きます。
    • 抜差管内側についているグリスや汚れとオイルが混ざるのを防ぐため、注油口先端が抜差管外管内側に直接当たらないように差し込みます。
    • 注油口先端は金属でできていますのでローターに直接当たらないように注意深く差し込みましょう。
  2. オイルが全体にゆきわたるようにレバーを動かしてください。
ローター
  1. 抜差管を抜いて水分を出しましょう。
  2. 演奏前と同じようにローターに注油してください。
  3. 楽器の表面をポリシングクロスで軽くふきましょう。
    汚れや変色が目立つ場合は、次項の手入れ用品をお使いください。

※仕上げにシリコンクロスを使うと美しい光沢がよみがえります。

ホルンに限らず、金管楽器やサクソフォンなどを磨く際には、それぞれの材質や表面仕上げに合った磨き剤を使います。ラッカーがかかっている楽器には「ラッカーポリッシュ」、銀メッキがかかっている楽器には「シルバーポリッシュ」、ラッカーもメッキもかかっていない楽器には「メタルポリッシュ」を少量「ポリシングクロス」につけて磨いてください。
ラッカーの塗膜はそれほど硬くないので、ポリシングクロスで乾ふきすると、それほど力を入れたつもりでなくてもラッカー表面に細かいスリキズがつくことがあります。また、空中に浮遊している塵の中には砂塵のようなものも含まれていることがあり、そういったものが楽器の上に乗ったり、クロスにまぎれたりしている状態のままふくと、やはりキズがつく場合があります。磨く際にはあまり強く力をかけず、根気よく少し広い範囲で磨くことがコツです。

ホルン用のスワブは、楽器の吹込管(マウスパイプというマウスピースを差し込む管)の太いほうから入れるとスムーズです。第1抜差管、第2抜差管については、どちらから入れてもかまいません。
スワブは錘のあるほうから入れ、管体の巻きに沿って楽器を回します。入れた方向と反対の方向からスワブの錘が出てきたら、錘が付いた紐を引っ張ることで、徐々にスワブ本体が出てきます。
第1抜差管や第2抜差管についても錘を入れて紐を送り、曲がっている管の頂点付近まで錘が届いたら抜差管を回転させ、出口を下にして抜差管を振りながらスワブの錘を送ります。出口(入れたほうと反対側)から錘が出たら紐を引っ張ってスワブを抜いてください。

なお、スワブには「S1」と「S2」とがあり、「S1」は主管抜差、第1抜差、第2抜差に使用できます。F管とB♭管両方に使用が可能です。「S2」はマウスパイプ用です。