ホルンのしくみ
構造いろいろ

まるでベッドのサイズみたいですが、ホルンの構造名を言います。大きくシングルホルンとダブルホルンがあり、シングルにはF管やB♭管、F管より1オクターブ高いHigh F管などがあります。F管はレバーを押さない時で全長約360センチメートル、B♭管は約270センチ、High F管は約180センチです。管が最も長いF管が、音域も最も低くなります。
ダブルは2つの調の管が1つになった楽器のことです。F管とB♭管の組み合わせが一般的です。
「デスカントダブル」はB♭管とHigh F管を組み合わせたもので、デスカントは「音が高い」という意味です。
トリプルはF管とB♭管とHigh F管の3つを組み合わせた楽器です。見た目にもだんだん管の数が増えます。では、F管とB♭管の音を聴き比べてみましょう。

B♭シングルホルン

B♭シングルホルン

F/B♭フルダブルホルン

F/B♭フルダブルホルン

F/B♭/High Fトリプルホルン

F/B♭/High Fトリプルホルン

F管の音

Bb管の音

ホルン音域表

左がセミダブル、右がフルダブルです。この2つは同じ音域を持ちますが、構造が異なります。

F/B♭セミダブルホルン

F/B♭セミダブルホルン

F/B♭フルダブルホルン

F/B♭フルダブルホルン

セミダブルは全体の管の長さが少し短く、次の概念図ではその構造をおおよその長さとバルブを3つの丸で表しています。バルブセクションは実際には2階建になっていますが、わかりやすいように位置を離して描いています。

フルダブルホルンとセミダブルホルンの概念図

フルダブルホルンとセミダブルホルンの概念図

低いB♭の音を出すには約275センチの管の長さが、もっと低いFの音を出すには約370センチの長さが必要です。
フルダブルホルンでは、B♭の迂回部かFの迂回部のどちらかを通りますが、B♭の迂回部は約30センチなので、275-30=245センチ分の管は低いFの音を出す時にも共用します。つまり、370-245=125センチがFの迂回部に必要な長さです。

一方、セミダブルホルンでは、低いB♭の音を出す時の275センチの管を基本にしています。低いFの音を出す時は、Fの迂回管を通って元に戻り、275センチの管を使い切ります。つまり370-275=95センチがFの迂回部に必要な長さで、フルダブルよりも125-95=30センチ短くて済みます。
セミダブルホルンはフルダブルに比べて、0.1キロか0.2キロほど軽くなります。ただしデメリットもあり、低いFの音を出す時にはF管のバルブセクションを通った後、B♭管のバルブセクションも通ることになり、管の中の凹凸を多く通る分、音が影響を受けます。
セミダブルもフルダブルも、1900年前後にアレキサンダーやクルスぺなどの製作者によってその原型が形作られました。フルダブルホルンの各名称を紹介します。

F/B♭フルダブルホルンの各名称

F/B♭フルダブルホルンの各名称
  • ベル(朝顔)
  • 1番管
  • マウスパイプ(吹込管)
  • マウスピース
  • 胴輪
  • ベルスクリュー
  • 主管抜差(メインチューニングスライド)
  • 第1ロータリーバルブ
  • 第2ロータリーバルブ
  • 第3ロータリーバルブ
  • 第4ロータリーバルブ
  • F管第1抜差管
  • F管第2抜差管
  • F管第3抜差管
  • B♭管第1抜差管
  • B♭管第2抜差管
  • B♭管第3抜差管
  • 第1レバー
  • 第2レバー
  • 第3レバー
  • 第4レバー(F/B♭切替)

※各名称を選択すると、該当するパーツを拡大します

ゲシュトップとは、音色を変えるためのホルン独特の演奏方法のことです。
しかし音程が微妙に高くなり、適当な替え指がない場合もあります。そのためB♭シングルホルンやB♭/High Fデスカントダブルホルンには、「ゲシュトップキイ」と呼ばれる少し音程を低くする補正バルブがついています。

ゲシュトップキイ

あくまでヤマハの現場での話ですが、右側のくるりんとした管を「胃袋」、左側のぽこっとした管を「長靴」と呼んでいます。形がなんとなく似ているでしょう? これらの管は、演奏の合間でも頻繁に取りはずして水を抜くので、ホルン奏者には親しみのあるパーツだと思います。

「胃袋」と「長靴」

ホルンは他の金管楽器と同じように、黄色っぽい金色のイエローブラスや赤っぽい金色のゴールドブラスを使うことが多いのですが、管体に銀色の洋白(ようはく)を使うこともあり、これはホルンならではの特徴です。全部銀色で非常に印象的です。

シルバーホルン

通常のロータリー式ホルンとウィンナホルンの音色が異なるおもな理由として、ウィンナホルンのボアサイズが11mmと細いこと、ベルや吹込管のテーパー(内径の広がり加減)がまったく違うことが挙げられます。ほかに、バルブシステムの違いや、ボーゲンの存在などの影響もあります。
また、ウィンナホルンは基本的にF管ですが、通常のホルンは大抵ダブルかトリプルで、B♭管の使用率が非常に高いことも大きなポイントとなります。

開放⇔閉鎖を手動で行う方式のものをクラッチバルブといいます。レバーで操作しバネで元の位置に戻る通常のバルブと違い、開けたら開けっ放し、閉めたら閉めっ放しで使うバルブです。