ホルンの成り立ち
ホルン誕生ストーリー

ホルンの起源は、簡単に言うならば「角笛(つのぶえ)」、つまり動物の角などで作った笛にあると言えます。ホルンは英語hornやドイツ語hornで、フランス語では「コールcor」、イタリア語では「コルノcorno」と言います。「コール」や「コルノ」はもともと、角を指す言葉であり、ホルンの起源を端的に示しています。おそらく、古代の人々が、狩猟で獲った獣の角を吹いて楽器としたのでしょう。それがホルンの起源であり、また語源でもあるようです。ホルンと名のつく楽器はほかにもありますが、今日ホルンと呼ばれるものは一般的に「フレンチホルン」のことを指します。

16世紀まで主に狩猟時の信号用楽器として発達し、馬に乗りながら吹けるように管を大きく巻いて肩に提げるようにしました。その際邪魔にならないように、ベルは後ろ向きになったと言われています。
唇を振動させて音を出すという点では、トランペットに近い特徴をホルンは持ちます。そのせいか、ホルンはトランペットとほとんど同じの歴史を歩みます。
19世紀中頃までのホルンは「ナチュラルホルン」と呼ばれることもあったことでわかるように、大きく広げられた発音口(ベル)と、円形に丸められた管にマウスピースをつけただけの、非常にシンプルな構造でした。
こうした楽器は、唇の振動を調節することだけでしか音程が変えられず、いわゆる「自然倍音」と呼ばれる音のみでしか演奏できません。もちろん音階も演奏できません。そこでホルン奏者たちは、ベルの中に手をさしこむことで音程を変え自然倍音以外の音を出す方法を考え出したのです。「ゲシュトップ奏法」と呼ばれ、18世紀のホルン奏者たちによって発展していきます。
しかし、ゲシュトップ奏法をもってしても出せる音にはまだ限りがあり、この奏法によって得られる音や音程は不安定で、音色もくぐもった感じになります。そうした不満を解消するために、19世紀中頃になって、現在のようなバルブによって管の長さを瞬時に変えることのできる「バルブホルン」が開発されました。
バルブホルンの登場によって、ホルン奏者たちは容易に安定した半音階が演奏できるようになったわけです。
さらに19世紀の末になって複数の長さの管を組み合わせた「ダブルホルン」が発明され、20世紀には「トリプルホルン」が登場します。