ホルンのできるまで
番外編

工場の一角には、中低音金管楽器を修理している工房があります。全国から壊れてしまった楽器が届きます。
まるで交通事故に遭ったような楽器もあります。ベルを付けたまま体重をかけてしまい、管が無残につぶれてしまったものや、落としたようなもの、長年あちこちでぶつけた凹みが重なっているものなどが修理を待っています。

折れ線が入ったベルを直すだけで6時間以上掛かる。楽器と格闘している感じ。

折れ線が入ったベルを直すだけで6時間以上掛かる。楽器と格闘している感じ。

修理工房では、直して使えるものはできたら生かして使ってほしいと努力しています。しかし、作る以上に、直すのはとても大変な作業で、一般的にしばらく使った楽器はパーツを全部ばらすと、もう元通りには組めません。あちらこちらにゆがみが出て合わなくなってしまいます。1カ所直して元の場所に組んで、次に隣のパーツを外して直して組んで、その次にその隣を直して…と順番に修理していきます。

壊れたパーツの交換だけではダメで、例えば折れ線が入ったベルで、直す時間はチューバのベルだと6時間くらい。折れた部分をタテヨコ、タテヨコ、と10回くらい少しずつきれいにならして磨き上げていきます。見た目は元通りですが、残念ながら金属は一度折れてしまうと音の振動が完全には伝わらないので、音色が元通りになることはありません。楽器は大切に扱いましょう。

ぶつけて凹んでしまったチューバと修理後

ぶつけて凹んでしまったチューバと修理後

痛々しいピストン周りの管も、美しくなった

痛々しいピストン周りの管も、美しくなった

楽器を愛する人たちが一生懸命に作り、直している、いろんな人の想いが込められた楽器、大切にしたいですね。