トロンボーンのマメ知識
トロンボーン協奏曲の名曲

トロンボーンのための協奏曲は、古典派時代に作曲された作品が現在でも時折演奏されることがありますが、定番といえるような作品は多くありません。トロンボーンの独奏楽器としての可能性を追求しはじめたのは20世紀になってからではないでしょうか。

ロシア海軍の軍人でもあったリムスキー=コルサコフが、海軍軍楽隊の監督官を務めていた頃に作曲した曲。その時期のリムスキー=コルサコフは楽器の用法やオーケストレーションなどを熱心に研究しており、この協奏曲にもその成果が反映されているようです。同じ時期にはオーボエやクラリネットを独奏とする吹奏楽のための作品も生まれています。この協奏曲では、ロシア民謡からの影響が感じられるトロンボーンの美しい旋律が目立ち、リムスキー=コルサコフの個性が表れているといえるでしょう。

20世紀には多くの作曲家がトロンボーンのための協奏曲作品を残しています。ヘブライ狂詩曲「シェロモ」で有名な、スイスに生まれてアメリカで活躍したエルネスト・ブロッホは、ユダヤ系の家系で、ユダヤ民族にまつわる題材を創作活動に反映し続けた作曲家でした。この作品には、第2次世界大戦の時、ナチス・ドイツの犠牲となったユダヤ人への哀悼の意が込められていると伝えられています。ブロッホがこの作品の独奏楽器としてトロンボーンを選んだのは、この楽器がもともと教会で用いられることが多く、神の象徴と考えられることによると推察されます。

エルネスト・ブロッホ

エルネスト・ブロッホ(1880~1959)