トロンボーンのしくみ
[実験]右腕を伸ばすにも限界がある!

トロンボーンを演奏するとき、スライドは最大でどれくらい伸ばすかというと、テナートロンボーンの場合、だいたい60センチまで。これは平均的な日本人の成人男性が目いっぱい腕を伸ばしたくらいの長さです。
では、もし手が届かない場合はどうするのでしょう? ヒモをつけて、遠くのちょうどいいところまでスライドさせるという裏技もあるようですが…。
そもそも腕を遠くに伸ばすのは、管の長さを伸ばすためですね。そこで、別の管を楽器の途中に足すことを考えました。そして使いたい時だけ追加の管に息が通るようにすればよいわけです。
その追加の管は、トロンボーンの低音域を広げる役割も果たします。テナートロンボーンの場合、基本の調子であるシ♭からラ、ソ、ファまで音域が広がるので、この追加の管のことを、ファを表すFにちなんで「F管」と呼びます。また追加の管を使うための切り替え装置を「バルブ」といいます。
これによって、小柄な人でもトロンボーンが演奏しやすくなったわけです。

内側で渦を巻いているのがF管(えふかん)。銀色の丸いのがバルブ。

内側で渦を巻いているのがF管(えふかん)。銀色の丸いのがバルブ。

バルブがあれば手を伸ばさなくても低い音が出しやすくなりますし、バルブを切り替えるだけで音を変えることもできます。
バストロンボーンには、このバルブが2つ付いているタイプのものがあります。2つバルブがあるとON/OFFの組み合わせが4通りになるので、バルブを動かすだけで4つの音が出せるわけです。
トロンボーンのバルブが発明されたのは19世紀なのですが、それ以前には例えばシ♭からドへつなげて吹くことはたいへんむずかしいことでした。けれども現在では、バルブを使うことで、簡単にできるのです。

バルブが2つあるバストロンボーンの演奏例