ドラムのしくみ
音が響くしくみ

ドラムのヘッドを叩くと、打面ヘッドは変形してシェル内部の空気を圧縮します。圧縮された空気は裏面のヘッドを押し、変形させます。その後、打面ヘッド、裏面ヘッドの変形がドラム全体に伝わって反射して…、という作用を繰り返して振動。そして、打面と裏面それぞれの振動から生まれる空気の振動が音となって響き、やがてヘッドの振動が収まるにともなって減衰していくわけです。

ドラムのチューニングとは、基本的には、ドレミの音を合わせる訳ではなく、そのドラムがよく鳴る張り具合、自分の好みの響き具合に調整することです。ヘッドは均一に張られていないと、叩く場所によって音の高さがずれて音がにごってしまいます。そこで、ヘッドのどこを叩いても同じ音の高さで鳴るように調整するわけです。
また、1つのドラムの打面と裏面の張り具合を、わざと変えてチューニングします。たとえば、打面も裏面も同じ強さで張った場合、音の余韻は長いのですが音量はそれほど出ません。ところが、このバランスを変えると、叩いた瞬間の音量が上がるのです。さらに、打面より裏面を高めに張ると音は大きくなってトーンと伸び、逆に裏面を弱めに張ると音はあまり伸びずに叩いた時のボンという音が強調されて聞こえます。張り具合の差を広げるほど、音色に変化が大きくなるのです。

打面と裏面を等しく張った場合
打面より裏面を強く張った場合

その他にドラム同士の調整も必要です。たとえば、タムタムで隣同士の音の高さが近すぎると両方叩いた時に音がにごってしまうので、ある程度離して音を合わせるのが一般的。打楽器には管楽器や弦楽器ほどはっきりとした音程がある訳ではありませんが、ドラムの数が増えるほど、きちんとチューニングしないと落ち着かない雰囲気の音になってしまうのです。またタムタムをいくつも並べて使う場合は、音階をつくってメロディを演奏することもあります。

ドラムの音色や響き、広がり感等は、シェルの形状によって変わります。
シェルの主な役割はヘッドの振動に共鳴することです。そして、共鳴体の容積が大きいほど、固有振動数が低くなり、低音域に対して共鳴しやすくなりますし、逆に容積が小さいほど高音域に対して共鳴しやすくなります。つまり、口径の大きい、あるいは深いシェルを選ぶと、太く重厚感のある音色をつくることができるし、小口径や浅いシェルを選ぶと、明るく軽快な音色をつくることができるわけです。
ドラマーは演奏する音楽やスタイルに応じて、さまざまな口径や深さのシェルを選び、組み合わせて、しかもヘッドを独自にチューニングして、多彩な音程や音色、響きで音楽を表現しているのです。

シェルの形と音の関係