ドラムのできるまで
美しく塗装する

続いてサンディング、すなわち表面に残っている接着剤を取り、細かい凹凸を磨いて塗装がうまく載るようにする工程です。化粧に例えると、ファンデーションを塗る前にスクラブ洗顔をして、ホクロがあれば取ってしまうという感じでしょうか。

始めは機械で磨きます。サンドペーパーがくるくる回り、木地に当たった時の結点を削っていきます。シェルの内側と外側をそれぞれ数回ほど磨き、最後は人が磨いて仕上げます。

内側、外側を機械で磨いているようす

内側、外側を機械で磨いているようす

木目も美しく磨かれたシェル

木目も美しく磨かれたシェル

ここから塗装の工程です。塗装は下塗りして磨き、中塗りして磨き、色を補正してから上塗りして鏡面仕上げへと進めていきます。塗料は一度硬化するとその上に塗っても塗料が載らないので、塗る前は必ず研削して表面に細かい傷を付けます。
始めに、最終的な色の半分くらいまで色付けします。布に液を付けて手で刷り込んでいくと木目の模様が浮き上がってくるのです。

塗装の第一段階、特注色のダークグリーンを塗っている

塗装の第一段階、特注色のダークグリーンを塗っている

乾燥させた後、ロボットを使ってある規定の膜厚になるように中塗りをします。細かい凹凸がすべて埋まるように粘度がかなりある塗料を使います。そして乾燥させ、表面の凹凸をペーパーで平らに磨き、スプレー塗装や装飾的な加工を施します。塗装はさまざまな好みに応えられるように、色も加工法も多彩です。

ツヤのない黒色になるようにスプレーで塗装中

ツヤのない黒色になるようにスプレーで塗装中

塗装時に確認するための色見本板

塗装時に確認するための色見本板

キラキラしたスパークル系のシェル

キラキラしたスパークル系のシェル

塗装後の研磨は機械で磨いたり、人の手で磨いたりします。この機械では中央にシェルをセットすると、右から縦方向に回るバフが、左からは横方向に回るバフが当たって磨きます。黄色は粗(あら)バフ、白色が仕上げ用のバフです。

シェルの表面を磨く機械

シェルの表面を磨く機械

最後は熟練者が細かくチェックして磨き上げます。バフで磨くとバフ筋のようなものがどうしても入ります。ブラックなど色の濃いものほど気になるので、特に注意して仕上げています。

顔が映り込むほど磨かれる

顔が映り込むほど磨かれる

シースルー塗装の上に濃淡のある赤色を塗った胴

シースルー塗装の上に濃淡のある赤色を塗った胴

外観の美しさももちろんですが、膜厚の薄さにもこだわっています。塗装の膜は薄ければ薄いほど、シェルが振動して音が伸びるのです。それでUV塗装という、膜が薄く仕上がる塗装をしています。
UV塗装というのは、UV光線、つまり紫外線を照射すると数分で硬化するUV塗料を使う塗装です。とても薄い膜を何層も重ねられるので、見た目にも奥行きが出ますし、退色や変色を抑える効果もあるのです。ドラムは、西日や蛍光灯の光が当たっただけでも色が変わってしまうものなのです。

塗装では難しい複雑な模様の場合や、屋外で使うマーチングドラムでは、ポリエステルと塩化ビニールのフィルムを使います。3枚以上重ねて模様がつくられています。

複雑な模様のフィルム

複雑な模様のフィルム

フィルムの裏側が接着面になっているので、保護シートをめくり、シェルと合わせて機械にセットします。そしてシェルを回転させながら圧力をかけて貼っていきます。

接合部が湿気硬化型になっていて、貼ってすぐははがしやすいのですが、一昼夜置くとセメントのように固まってはがれなくなります。

表側の保護シートをめくり、裏側もめくって機械にセット

表側の保護シートをめくり、裏側もめくって機械にセット