ドラムのできるまで
シェルをつくる
材料はどんな木?
ドラムのシェルをつくる板は、バーチ(樺/かば)やビーチ(ぶな)、メープル(楓/かえで)、オーク(なら)など。これらは2枚合板と3枚合板があります。

左からオーク、ビーチ、バーチ、メープルの合板
合板というのは薄い板を何枚か貼り合わせた板のことです。板は丸い幹を大根の桂剥(かつらむ)きのようにしてつくります。2枚重ねのものを2プライ合板とも呼び、ドラムのシェルは6プライから10プライでつくります。基本的に外側が横目になるように重ねます。つまり、外側から横目、縦目、横目…、というふうに重なっているわけです。

メープルの合板。表と裏で木目の向きがちがう
そして、たとえば6プライのタムタムの場合、組み合わせる3枚の2プライ合板を選んでから、上下をカットしてサイドは斜めにカットします。また、シェルの内側の合板ほど円周が短くなるため、長さを短くします。

長さをずらして平行四辺形に切られた3枚の合板
ドラムセットは複数のドラムから成っているので、1つのセットが同じ音色と外観に仕上がるように、同じ木の種類で似た色の合板を選びます。後で塗装はしますが、特にシースルー系塗色は材質の色で差が出やすいので、材料選びの段階から注意を払います。
まんまるく成形する

機械で接着剤を塗る
続いて接着剤を塗って成形します。非常に粘度の強力な接着剤を、いちばん外側と内側の合板には片面に、間に挟む合板には両面に塗ります。
接着剤を塗った材料をくるりと曲げながら、急いで型の中に叩き込んでいきます。それによって型の内側に合板を完全に密着させ、ある程度木が収縮しても胴体の変形や継ぎ目のすきまが出ないようにします。
また、接着剤がすぐに乾き始めるため、1つ済んだらすぐその内側に次の材料を叩き込みます。つなぎ目は均等にずらしていきます。この作業はスピードが大事です。

温めた型へ1枚目を叩き込むようす

2枚目を投入中、隣でハンマーを手にスタンバイ

エアバッグ成形の道具、黒いゴム部分が空気でふくらむ
この後、材料の内側から空気の圧力をかけて型にまんべんなく密着させるエアバッグ成形をします。特殊なタイヤのチューブのようなもので内側から圧力をかけて締め、シェルを真円にするのです。
材料を型で安定させた状態で巨大な電子レンジのような機械に入れ、マイクロ波で一気に乾燥させます。熱ヒーターで乾かすと木も接着剤も温めてしまいますが、マイクロ波は水分だけに働きかけるので材料にダメージを与えないのです。こうして丸く成形したのが、こちら。

丸くなったシェル、黄色いのは接着剤
これを該当する商品のサイズに合わせて上下をカットすれば、でき上がりです。

胴の両端を平行にカット