クラリネットのマメ知識
クラリネットの名曲-協奏曲編

円熟期のモーツァルトが書いたこの作品は、A管(イ調)クラリネットのための名曲中の名曲として君臨しています。流麗な旋律と華麗なパッセージがブレンドされ、モーツァルトならではの魅力に溢れています。彼は友人のクラリネット奏者、アントン・シュタードラーのためにこの協奏曲を作曲しました。シュタードラーは通常の楽器ではなく、低音域を拡大したバセットクラリネットを新たに開発し、モーツァルトはこの楽器のために協奏曲を書きました。しかし、この作品には、通常のクラリネットで演奏できるかたちの楽譜しか残っておらず、この楽譜を使った演奏が一般的です。しかし、最近ではバセットクラリネットを復元した演奏も見られるようになりました。

オペラ「魔弾の射手」で有名なウェーバーも、モーツァルトと同様、友人のクラリネット奏者、ハインリヒ・ベルマンのためにクラリネットのための音楽を書きました。2人の友情のおかげで、2曲の協奏曲、小協奏曲、5重奏曲、ピアノとの2重奏曲の5曲が残されたわけです。ベルマンはすべての音域にわたって均一な響きを出すことのできる名手として知られていましたから、この第1番の協奏曲でも幅広い音域が使用されています。

ニューヨーク生まれの作曲家コープランドは、20世紀のアメリカを代表する作曲家の1人です。彼の協奏曲は、20世紀の偉大なクラリネット奏者、ベニー・グッドマンのために書かれました。多彩なオーケストレーションを背景に、クラリネットは技巧的なパッセージやカンタービレはもちろん、スウィングジャズの代表者だったグッドマンに合わせ、ジャズの要素も色濃く、いかにもアメリカらしい音楽となっています。ちなみに、グッドマンの演奏は多くの作曲家を引きつけ、他にもバルトークが「コントラスツ」を、ヒンデミットが協奏曲を彼に捧げています。

ベニー・グッドマン

ベニー・グッドマン(1909~1986)