クラリネットのお手入れ
季節のお手入れ

冬場に木管楽器が割れやすくなるのは、どうしてだと思いますか? それは、まず冬の冷たい外気や室温によって、吹奏前の楽器は、かなり冷やされてしまっています。ところが人間の吹く息は体温と同じ温度、つまり36度~37度前後あるため、楽器に息を吹き込むと、管の中が温められ、一気に温度が上昇します。そこで木は外へ膨らもうとしますが、外側は低温によって収縮しているため、この温度差に耐えられなくなって、ヒビが入ってしまうことがあるのです。

割れやすいのが、上管のこの部分。

割れやすいのが、上管のこの部分。

ちなみに割れの原因としては、温度差のほか、急激な湿度の差が原因の場合もありますので、冬場だけでなく梅雨時など湿気の多い季節にも注意が必要です。
寒い時期に割れを防ぐには、まず楽器を使う前にケースから出し、楽器をコートの中へ入れたり、体にくっつけたりして温めることが肝要です。必ず、楽器全体が室温に慣れるのを待ち、それから吹奏するようにしましょう。ヒビが最も入りやすい部位は、マウスピースに近く息で温まりやすい上管と呼ばれる 部分です。割れが目立たない場合は、気づかないこともありますので、ぜひ一度お手持ちの楽器を点検してみてください。そして、万が一ヒビを見つけたら、なるべく早く専門店へ修理にお持ちください。というのは、ヒビは徐々に広がっていきますし、それにつれて修理も難しくなり、最悪の場合、楽器が割れてしまうこともあるからです。

管内を保護する「ボアオイル」

管内を保護する「ボアオイル」

もちろん、割れてしまってもリペアは可能です。ヒビが大規模な場合は、骨を治すように、割れたところにビスを打って締めるという修理や、割れた管体を交換するという方法もあります。しかしいずれにしても元の楽器の状態には戻りませんので、どうしても転ばぬ先の杖、ということになります。

もうひとつの原因である湿気への対策としては、管の中の水分を吸収し、内部の変型を防ぐボアオイルというものがあります。使い方は、スワブで管内の水分を取り除き、きれいに掃除した後、ボアオイル用にもう一枚別のスワブを用意して、これにオイルを少ししみこませ、管内にゆきわたらせるようにします。管の内側の表面に、ボアオイルのごくうすい膜が作られるようなイメージです。

ガーゼをこのように巻いて管内を掃除する。

ガーゼをこのように巻いて管内を掃除する。

クラリネット、フルート、ファゴット、そしてサックスなど木管楽器を組み立て、さあ吹こうとするとジョイント部がちょっとカタカタ、ゆるみを感じることがあったら、要注意。ジョイント部にあるコルクが劣化し、ぴったりとはまらなくなっているかもしれません。

ジョイント部のコルクの劣化

コルクは消耗品なので、定期的に交換する必要があります。使い方や保管によっても違いますが、目安としては1、2年といったところでしょうか。実は、修理品で持ち込まれる楽器の中には、このジョイント部のコルクがかなり傷んでいる場合があります。写真のクラリネットは、手で簡単にジョイント部のコルクが剥がれてしまいました。劣化して傷んだコルクは剥がれやすく、また場合によってはペロっと剥離してしまっている場合もあります。そんな状態になってしまった時は、楽器店で修理しましょう。

コルクの劣化が進む原因は、コルクグリスの塗りすぎです。コルクグリスは、管を組み立てる時に、コルクが新しくてはまりにくい場合に、滑りやすくするためのもの。スムーズにはめることができるなら、使用する必要はありません。それだけでなく、グリスはコルクの中に浸透すると、コルクの接着剤を溶かしてしまいますので、決して塗りすぎないように注意してください。特に、コルクのグリスを拭き取らずにケースにしまうと、コルクが急速に劣化します。演奏後は、かならずコルクに付いているグリスを拭き取る習慣をつけてください。

新たなコルクを接着中。接着部の厚さが変わらないように断面は斜めにカットされる。

新たなコルクを接着中。接着部の厚さが変わらないように断面は斜めにカットされる。

湿気の多い季節におすすめしたいのがデオドラントです。ケースの中に入れておくだけで、いやな匂いを消臭してくれます。じめっとした梅雨時は、こんなグッズを利用して、楽器もココロも少しでも爽やかに。

ご注意
メッキ仕上げの管楽器は、メッキの性質上、時間が経過すると表面が変色する場合がありますが、演奏には何ら支障はありません。
なお、変色部分は手入れによって簡単にきれいになります。

※手入れ用品は、それぞれメッキの種類に合った専用のものをご使用ください。

デオドラント(小型ケース用)

デオドラント(小型ケース用)