チューバの成り立ち
チューバ誕生ストーリー

金管楽器の歴史において、たいへん大きな出来事のひとつに挙げられるのが、1820年代のバルブ装置の発明です。それ以来、バルブ装置はさまざまな金管楽器に用いられるようになり、また新しい楽器も次々と発表されるようになりました。そうしたなか、1835年9月12日に、現在のチューバの原点となるバスチューバという楽器が生まれたのです。
この楽器を発明したのがドイツ人の軍楽隊長ヴィルヘルム・ヴィープレヒトと楽器製作者のヨハン・ゴットフリート・モーリツという人。そしてモーリツが特許を出願したのが、1835年9月12日だったのです。

"チューバ"というのは、ラテン語で、もともと"管"を意味する言葉でしたが、古代ギリシャ・ローマの時代には青銅製の管楽器の名前としても用いられ、その後、"ラッパ"全般を指す言葉として使われていました。発明者のモーリツは、その"チューバ"の低音楽器だという意味で 「バスチューバ」と命名したわけです。

トランペットやホルンは、19世紀にバルブ装置を備えたタイプに改良される以前から、バルブ装置のないシンプルなかたちで活躍していました。それに対してチューバは、発明された時期が19世紀だったこともあり、最初からバルブ装置付きでした。
ではチューバがつくられる以前には、どのような楽器がその役割を担っていたのでしょう?
構造はまったく違いますが、チュ-バ出現以前に、オーケストラなどで同様の役割を果たしてきた楽器に、オフィクレイドやセルパンなどがあります。これらは木管楽器のようにキーをもつタイプの楽器で、19世紀前半までよく使われていました。例えば、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」序曲(1826年)ではオフィクレイドが指定されていますし、ワーグナーが「ファウスト序曲」を最初に書き上げた時(1840年)、バスチューバではなく、セルパンの使用を念頭に置いていました。

セルパン

セルパン