チューバのできるまで
管体をつくる

チューバの管は、どこもかしこも円すい形。そこでまず円すい管をつくる必要があります。その方法はいろいろあって、板を最初から扇形に切って丸めることもあれば、円筒のパイプから円すいをつくることもあります。

まっすぐな円筒形のパイプをいきなり円すい形にしようとすると、金属がしわくちゃになったり、割れたりしやすいものです。まずはパイプの一方を熱処理して縮め、もう一方は少し太いものを差し込んで広げます。それから、なめらかな円すいに加工するのです。

段加工し、3段になった管。遠くからは円すいに見える

段加工し、3段になった管。遠くからは円すいに見える

きれいにつくった円すい管も、曲げる際に、いったんつぶしてしまいます。といっても、カドが入るようなつぶし方はしません。そして、写真のように、つぶした面が外を向くようにして曲げるのです。

つぶし曲げをした管

つぶし曲げをした管

つぶし曲げをした管は、鉄の型にはめた後、片側から水を入れ、逆側に栓をして圧力をかけるときれいに膨らみます。この作業をバルジ加工といいます。バルジ加工は、小さな円すい管の場合でも、同じようにおこないます。

つぶした管がバルジ加工1回で左に、2回で右になった

つぶした管がバルジ加工1回で左に、2回で右になった

バルジ加工の前(左)と後(右)

バルジ加工の前(左)と後(右)

加工前後の管を1つの型にはめたもの。左が加工前で溝にすき間がある。

加工前後の管を1つの型にはめたもの。左が加工前で溝にすき間がある。

チューバに限らず、金管楽器の管の曲げ方にはいろいろな方法がありますが、もっとも古典的なのは、職人が手で曲げるという方法です。生産数量が少ない高級品や試作品の場合は、梃子(てこ)の原理を利用した昔ながらの方法で管を曲げています。どのくらいの力と角度で曲げるかは、職人さんの腕と感覚次第。写真にある板のブロックは曲げ具合を確かめるゲージです。

太いアクリルの棒で、管を寸法通り曲げる

太いアクリルの棒で、管を寸法通り曲げる

うまく曲がったか確かめる木のゲージ

うまく曲がったか確かめる木のゲージ

型を使わずに、手技のみで管をつくることもあります。大きな金属板を2枚切り、表裏を張り合わせて溶接し、つなぎ目をハンマーでつぶした後、鉄の棒でだんだん丸くしていくのです。その際、内側は縦の棒で、外側は直交するように横の棒でこすって、さらに曲がっている棒も使いながら、外側も内側も寸法通りにぴたりと仕上げます。まさに熟練した職人の技といえるでしょう。

手作業で金属板から仕上げたニ番管

手作業で金属板から仕上げたニ番管