トランペットのマメ知識
伝統の音の秘密は1%の不純物!?

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の金管セクションは、昔から独特の音色を響かせることで知られています。これは、彼らが銘器といわれる古い楽器を伝統的に受け継いで演奏してきたためです。しかし金管楽器は磨耗が激しく、早急に新しい楽器を導入する必要に迫られていました。そこでヤマハに、伝統の音色を最新の製造技術で再現してもらえないかという依頼が寄せられました。

トランペット

トランペットなどの金管楽器は一般に黄銅(銅と亜鉛との合金)や丹銅(黄銅同様銅と亜鉛の合金だが、銅の含有量がさらに多い)といった真ちゅうの一種でつくられます。現在の製造技術を持ってすれば、純粋な黄銅や丹銅をつくるのは難しくありません。しかし、そうした純粋な素材からつくられたトランペットを吹き比べてみると、どうも伝統的な楽器とは音が違うのです。

そこで、ウィーンに伝わる古い銘器の素材を分析してみると、純粋な黄銅や丹銅ではなく、鉄、鉛、ニッケルなどの1%に満たない不純物が含まれていることが分かりました。ところが、意図的に鉛などの不純物をごく微量に含ませた黄銅板を使った楽器の製作は、想像以上に困難を極めたのです。長い時間をかけ何度も試行錯誤を繰り返し、材料を選択した結果、ようやく理想通りの不純物を含む素材の組み合わせによるウィーン・フィル特注モデルができあがりました。吹いてみると、音色は手本にした銘器に大変近く、特に強奏で音の割れにくい感じがそっくりでした。こうして伝統の音は守られ、ウィーン・フィルの金管セクションは、この不純物を添加した材料による楽器をヤマハに特注して再び手にすることが出来ました。

※ 現在は生産を完了しております。