アコースティックギターのお手入れ
覚えておきたいお手入れ術

弦をできるだけ長持ちさせるには、こまめに弦を拭くことが大切です。というのも、演奏しているときには指の汗や脂が弦に付いてしまいますが、それを放っておくと弦が錆びてしまうのです。弾き終わったなら時間を置かず、クロスなどで、すぐに拭く習慣を身につけましょう。
また、弦を拭くための専用のクリーナーも発売されています。ウェットティッシュタイプで使いやすく、さっと弦を拭くだけですぐに脂分を拭き取ることができて便利です。

弦を拭くための専用クリーナー

弦を拭くための専用クリーナー

指板は普段、弦の下にあるのであまり目につきませんが、弦をはずしてみると、指の脂、フレットの両脇に付着したホコリ、微細なサビなどで、案外汚れているものです。
お手入れ方法は簡単で、弦を交換するときに、レモンオイルなど専用のオイルを柔らかな布にとって、指板とフレットをていねいに拭くだけでOKです。専用のオイルを使うことで、汚れを取り除きつつ、適度な油分を与えておくことができます。ぜひ習慣にしてほしいと思います。

指板とフレットのお手入れ

指板とフレットのお手入れ

指板をお手入れする際にチェックしてほしいのが、フレットの傷。フレットはギターの音程を決める大切な部分ですが、常に弦が強く押しつけられますし、チョーキングなどでゴリゴリと擦られますので、傷つくことがあるのです。フレットの傷は、演奏時に弦が引っかかってノイズを出す原因になりますし、音色にも悪影響が出ますから、早めに対処しておきましょう。
対処の方法は、細かい傷であれば、研磨剤でフレットの頭を磨くことで、滑らかな状態に戻すことができます。その場合、研磨剤で指板の木材部分を傷めてしまわないよう、必ずフレット以外の部分をマスキングテープなどで養生してから作業してください。フレットを磨く際も、力を入れすぎないように、ゆっくりていねいに磨いてください。研磨剤では直せないような大きな傷、深い傷ができてしまった場合は、必ず専門店で見てもらうようにしましょう。

フレットを磨く前にマスキングテープで養生する

フレットを磨く前にマスキングテープで養生する

チューニングをしていると、ナットと弦が擦れて「ピチッ」と音が出ることがあります。ナットが削れて弦がスムーズに動かなくなっている状態です。チューニングが合いにくくなりますし、弦が切れる原因にもなりますので、早めに対処しましょう。
この症状の原因は、何回も弦交換をしているうちにナットの溝が削れたり、汚れが付着したり、傷が付いたりしたことです。基本的には、リペアに出して溝を削り直してもらうのがよいと思います。器用な人ならは自分でもできると思いますが、削りすぎには注意してください。

指板とフレットのお手入れ

指板とフレットのお手入れ

また、リハーサルの途中やライブの直前などでナットが鳴るようになった時は、応急処置として、鉛筆を使う手もあります。この方法は、写真のように、ナットの溝を鉛筆で擦るだけ。たいへん手軽ですが、かなり効果的です。鉛筆の芯の粒子が溝に入って弦とナットの摩擦を減らしてくれるので滑らかになるのです。ただし、その効果は数日間のみ。あくまでも応急処置と考えてください。

ナットは消耗品ですから何回か溝を削り直したら交換します。ギターのサウンドは弦が触れているパーツの素材によって大きく変化しますので、ナットの素材を変えるだけでもずいぶん音の印象が変わります。もしプラスチックのナットが使われているギターを弾いているならば、牛骨に変えてみるという手もあります。牛骨は古くからナットで使われている素材で独特の味わいがあります。今でも高級なギターによく使われています。プラスチックより滑りがよく密度が高いのが特長で、堅い素材なので芯のある明確な音を出すことができます。また金属製のブラスナットというものもあります。これは音もブライトになり、サスティンが伸びます。

市販されているナット

市販されているナット

牛骨やプラスチックのナットはパーツとして販売されていますし、安価ですから自分でナットを加工してみるのも面白いと思います。ただしブラスナットは素材が堅いので自分で加工することはできません。興味のある人は挑戦してみてはいかがでしょう。