クラシックギターのできるまで
伝統的な全面セラック塗装

ギターの表面に塗るニスは、優れたギターづくりに欠かせない大きなポイントです。それは何よりもまず、仕上がりが美しくなければなりません。使っているうちに変色したり、ひび割れが入るようなものでは駄目ですし、高温でベトついたりすれば演奏にも差し支えてしまいます。また、ニスは音そのものにも影響を与え、時にはニスひとつで音色ががらりと変わってしまうといわれるほど。

虫の分泌物というと不安に思う人がいるかもしれませんが、心配はご無用。お菓子のキャンディのコーティングにも使われている安全な塗料なのです。ラック虫は蚕、ミツバチと並ぶ三大益虫と称され、インドや東南アジアに多く生息しています。
セラックは塗り方や塗る回数、乾燥の時間を調整するのに熟練を要しますが、ギターには最高の天然塗料なのです。

茶色の物質がセラック

茶色の物質がセラック

セラックそのものは固形の物質ですが、それをエタノールで溶かし、タンポに含ませてギターに塗っていきます。最初は表面の細かい穴を埋めるように刷り込んでいく感じです。そしてどんどん塗り込んでいって肉を盛り、ツヤを出します。

塗り重ねる回数は、基本的には300回。ただし材料の状態や季節などによって調整することも必要です。塗装はボディ全体におこなうので、塗って乾かしてペーパーをかけての繰り返しで、時間的には3ヵ月弱かかります。そのようにして磨いていくうちに、セラックの塗料自体の色が付いて、ギターの色が少し濃くなるのです。

セラックをタンポで塗り込んでいるようす

セラックをタンポで塗り込んでいるようす

ギターの塗装膜は、厚いと音に悪く、薄い方がいいのです。セラックの場合、膜厚は20ミクロン~30ミクロン。スプレーのニスですと150ミクロン~300ミクロンになりますから、本当に薄く塗れるわけです。

右が塗装前、手にしているのが色ツヤの出た塗装後

右が塗装前、手にしているのが色ツヤの出た塗装後