ファゴットのしくみ
独特のしくみと音の出方

ファゴットはベルが上のほうにあるので演奏者には音が聞こえにくいように思われますが、けっしてそのようなことはありません。途中にすき間が開いていない金管楽器ならベルの先からしか音が出ませんが、ファゴットは音孔(トーンホール)があちこちに開いた木管楽器ですから、他の木管楽器と同じで、押さえていない音孔からも音が出るのです。ただし、一番低い音を吹く時だけは、多少、聞こえにくいといえます。このときはすべての音孔を閉じるので、上のベルからしか音が出ません。

ファゴットは構えたときに縦に長い楽器ですから、音孔の位置も、上から下まで、それなりの距離を取ることになります。そのため音が出る場所も、もっとも低い音はベルから、それより一つ高い音はベルの下の音孔から、という具合に、音が高くなるにつれて下がってきます。そして一番下まで下がったら折り返してテナージョイントに行き、今度は音が高くなるにつれて音孔の位置は上がっていくのです。オーケストラなどでファゴットの前に座る奏者は、後ろで音が回っていると感じることもあるようです。

ファゴットは大きな楽器ですから、音孔と音孔の間隔もかなり広くなります。そこで、届きにくくなる指の負担を少しでも軽くするためにも、音孔を斜めに開ける必然性が生まれてくるのです。またダブルジョイントの部分は、内側に2本の管が通っていますから、そのどちらかに向けるために、音孔は斜めにならざるを得ないという事情もあります。ほとんどの音孔が、管体の表面から垂直にではなく、斜めに開いていることは、ファゴットの特徴のひとつですし、またそうした仕組みが、ファゴット独特の音色を生み出しているともいえるでしょう。

垂直ではなく斜めに音孔が開いたダブルジョイント

垂直ではなく斜めに音孔が開いたダブルジョイント