ファゴットのマメ知識
ファゴットの名曲―室内楽編

ファゴット独奏のために書かれた室内楽曲が本格的に作曲されるようになったのは、18世紀前半(バロック後期)になってからのこと。しかし、その時代の作品で現在でも頻繁に演奏されるものはほとんどありませんので、ここでは古典派以降の作品を挙げておきましょう。

この作品は、「ファゴットとチェロのためのソナタ」として知られていますが、チェロのパートはおそらく通奏低音のパートであり、通奏低音の伴奏を伴ったファゴットの独奏ソナタではないか、という推測も成り立ちます。モーツァルトらしく、美しい旋律が高音域に現れ、古典派時代に「愛の楽器」と評されたファゴットの魅力が堪能できる作品となっています。モーツァルトはこのソナタを、ファゴットを愛好した友人のデュルニッツ男爵のために書いたといわれています。

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

サン=サーンスは、86歳で亡くなる年、1921年に、オーボエ、クラリネット、ファゴットをそれぞれピアノと組み合わせたソナタを連作しています。「ファゴットとピアノのためのソナタ」はト長調で書かれており、作曲年代からすればかなり保守的な印象を与えます。しかし、洒脱な旋律と洗練された和声のなかでピアノとファゴットの対話が繰り広げられ、円熟の境地を切り開いていた最晩年の作風がよく表れています。