ファゴットのできるまで
管体をつくる

ファゴットの木材には、現在は、主にヨーロッパ産のハードメープルを使っています。メープルとは楓(かえで)のことで、その中でも特に堅い木を選んでいます。といってもクラリネットなどに使うグラナディラに比べれば柔らかいので、長時間続けて演奏したりすると息の中の水蒸気を吸ってふくらみ、ジョイントが抜けなくなることもありますから、注意が必要です。

塗装する色はメーカーによっていろいろで、黒に見えるくらい濃いあずき色や、黄土色の楽器もあります。ヤマハでは、基本的に、赤っぽいあずき色を採用しています。またヤマハでは、工場内で長い時間をかけて、塗っては乾かし、塗っては乾かしを繰り返して仕上げています。

ベルジョイントの寸法に切ったメープル材

ベルジョイントの寸法に切ったメープル材

塗装前の木肌の色

塗装前の木肌の色

小豆色に塗られた状態

小豆色に塗られた状態

ファゴットは、音孔のほかに、キイポストの穴や金具が逃げるための溝など削る所がたくさんあり、サイズや形もさまざまなので、加工に用いるカッターも多種多様のものが必要です。そうした道具を駆使して、1本のファゴットを加工するのに、半日以上かかります。削った後は割れ防止のために内面をオイル処理します。

加工用のカッターは多彩

加工用のカッターは多彩

ファゴットの音孔は、管体のかたちが複雑なので、非常に高い精度で開けなければなりません。例えばダブルジョイントの場合は内側に2本の管が通っているので、そのどちらかの管に向けて開けるためには、音孔は、管体の表面から垂直ではなく、斜めにならざるを得ません。また管体の大きなファゴットでは、音孔と音孔の間隔を適切に範囲に保つためには、音孔を斜めに開けることも必要になります。さらに、場所によっては1つのタンポで3つの音孔をふさぐ仕組みになるなど、ファゴットの音孔の開け方はたいへん精密なのです。

奥が加工前、手前が加工後のダブルジョイント

奥が加工前、手前が加工後のダブルジョイント

独特な形のテナージョイント

独特な形のテナージョイント

音孔の大きさがいろいろなので、音孔をふさぐタンポのサイズもいろいろです。タンポには、フェルトと台紙をヤギや羊、牛などの動物の皮でくるんだものを使います。

タンポ

タンポ