フルートのマメ知識
フルートの名曲-協奏曲編

フルートが独奏楽器として人気を得始めたのは18世紀前半のこと。この時期は、多くの優れたフルート奏者が現れ、自らの技巧を披露するために自作のフルート協奏曲を作曲したのです。また、18世紀に貴族に最も愛好された管楽器がフルートでした。そして、そのようなフルート愛好者たちのために、たくさんの独奏曲が生まれたのです。

大バッハ=ヨハン・セバスティアンの次男、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハは、フルート愛好者でもあったプロイセンのフリードリヒ大王の宮廷楽師を務めていました。エマヌエル・バッハのフルート協奏曲は全部で5つ残されていますが、いずれも大王のために書かれたと推測されています。フルートの技巧を最大限に発揮したパッセージが目立ち、20世紀最大のフルート奏者の一人、ジャン・ピエール・ランパルが取り上げてから、たいへん有名な作品となりました。ちなみに、この協奏曲は、チェロ独奏用、チェンバロ独奏用のヴァージョンも残されています。

C.P.E. バッハ

C.P.E. バッハ(1714~1788)

古典派時代の、いや古今を通じて最も人気のあるフルート協奏曲といえば、やはりモーツァルトの2曲、ト長調KV.313とニ長調KV.314でしょうか。しかし、ここではフルートのほかにハープを主役にすえた協奏曲を挙げておきます。この協奏曲はモーツァルトがパリに滞在していた1778年に作曲されました。フルートを愛好するド・ギーヌ公爵とハープを得意とする彼の娘のために協奏曲作曲の依頼が来たからです。モーツァルトらしい優雅な旋律と二つの独奏楽器による対話が非常に印象的な作品です。映画「アマデウス」にも、この作品の第2楽章が使われています。

フランス近代の作曲家、ジャック・イベールは、管楽器のための協奏曲を多く残していますが、このフルート協奏曲はそのなかでも最も有名なものであるばかりか、20世紀の産んだ最高の傑作ではないでしょうか。この作品は1930年代の前半に作曲され、当時随一の名手だったマルセル・モイーズに献呈されています。第1楽章と第3楽章における洒脱なリズム感とフルートの華麗な技巧も聴きどころですが、フランスの作曲家らしい典雅な響きと流麗な旋律に溢れた第2楽章でもフルートの魅力が全開です。

(左)ジャック・イベール(右)マルセル・モイーズ

(左)ジャック・イベール(1890~1962)
(右)マルセル・モイーズ(1889~1984)