フルートのしくみ
音が出るしくみは?

まず、音を出すのは頭部管です。
リッププレートに唄口が開いていますね。この唄口の中央に、唄口の下から3分の1をふさぐような気持ちで下唇を当て、エッジに向かってほほえむように息を出します。唄口の向こう側の角がエッジ。頭部管の向きを調整すると、ちょうど音が鳴る場所が見つかるはずです。

リッププレートと唄口

頭部管の向きを調整して音を出している演奏例

リコーダーと原理は同じなのですが、リコーダーは息の出口がウインドウェイで固定されているのに対して、フルートは唇で息の出口を固定します。エッジに向かって息を当てると、唄口から入れた圧力の高い音の波が管を通り、足部管の先や開いた音孔など開口部に行きます。そして反射して戻って来て、唄口付近の空気を押し上げて外に戻そうとするのです。すると、その部分の音圧が下がり、今度は吸収しようとします。それで唄口のエッジ付近の空気を上下にふるわせる波が発生し、音に変わるというわけです。

唄口の左側には反射板や天然コルクが入っています。研究用につくったアクリルのフルートで説明しましょう。
反射板は唄口の中央から17ミリの位置に固定されています。クラウン(ヘッドスクリュー)を回すと反射板の位置がずれてしまうので、通常は回さないようにしてください。吹き込んだ息はこの反射板に当たって右に行きます。コルクの材質も音の響きを左右するのですよ。

頭部管の内側

頭部管の内側

頭部管は、管の左側が細くなる形に作られています。このような管をテーパー管といいます。テーパーというのは、楽器の用語では、管の開き具合のこと。ヤマハでは3種類のテーパーの頭部管を製作しています。

頭部管の内部の形状

頭部管の内部の形状。ヤマハのテーパーは3種類。

Gテーパーは細径から太径へほぼまっすぐな単純テーパーで、吹いたときの抵抗が強く、出た音が太くなります。Cテーパーは徳利のような流線形。息が入りやすくて明るい音色です。そしてYテーパーはGとCをミックスした形状で、繊細な音が出て適度に抵抗もあります。

唄口のカットにも、いくつかのバリエーションがあります。まず角張った形にするか丸みを帯びさせるか、そしてショルダーカットやアンダーカットの量はどの程度にするか、ということです。テーパーの性質によって、それに適したかたちに唄口をカットするのですが、これによって吹き心地も大きく変わるのですよ。

唄口カットの例

唄口カットの例

フルートの唄口の位置は、コルク(正確には反射板の端面)から17mmという位置に決められています。これは、オクターブ間とくに第三オクターブの音程を補正するためです。
フルートの管は開管(両端開管)で構成されており、共鳴周波数から算出される管長は、実際の管長よりわずかに長くなります。これを開管端補正といいます。この補正距離は演奏上、音の高さともに大きくなるため、仮にフルートが完全な円筒の形状でできていると、オクターブが上がると、音程が低くなってしまいます。これを正しい音程に補正するための工夫が、管端から17mmの位置の唄口と円すい形状の頭部管なのです。
この位置と形状は、1800年代にドイツの楽器製作者テオバルト・ベームが数々の試行錯誤より求めた数値で、現在のほぼすべてのフルートの基本となっています。

フルートにはEメカがあるものとないものがありますが、Eメカがあると3オクターブ目のE(ミの音)が出やすくなります。
3オクターブ目のEを演奏するときに左手薬指を開けます。そのときの空気の振動の波形をみてみると、Eメカがあるものでは、左手薬指のキイの位置に振動の腹(一番振動が大きい場所)があることがわかります。
しかしEメカがついていないキイでは、左手薬指を開けると、その隣のキイ(奏者側から見て、左手薬指の右隣のキイ)も一緒に開いてしまいます。そのため、振動の腹の位置が決まりにくく、Eの音が出にくいのです。
これを避けるため、Eメカ付きの楽器では、Eの運指をすると、左手薬指の右隣のキイを自動的に閉じる構造になっています。だから空気の振動の腹の位置が決まりやすく、Eの音が出やすいわけです。