パイプオルガンのしくみ
小型のパイプオルガン

小型のパイプオルガンは、箱の中に送風システムもパイプもアクションも収まっています。コンパクトながら伝統に根ざした音が響くのが特徴です。
四角い柱は木のパイプです。振動しやすく、理想的な音を出せるスプルースという木材を使った板を4枚貼り合わせ作られています。ここで用いているのは、ピアノの響板と同じ貴重な板材です。

左右対称に並べられた四角柱の木製パイプ

左右対称に並べられた四角柱の木製パイプ

パイプを支える板。この下に風の出てくる穴がある

パイプを支える板。この下に風の出てくる穴がある

銀色のパイプの表面には細かい模様が入っています。これは、丸く成形する前に、ハンマーで金属板の表面を叩いてあるからです。叩いて鍛えることで分子の結合を強め、明るく強い音が出せるようになります。パイプによっては叩かない場合もあります。
素材は錫(すず)と鉛を配合した金属で、錫52:鉛48とか、錫70:鉛30というように、目指す音色によって比率を変えています。前者はフルート系(やわらかい音)、後者はプリンシパル系の音(よく響く、パイプオルガンらしい音)が鳴ります。錫が増えると素材として硬くなり、音が明るくなるのです。

ハンマー仕上げされた金属製パイプ

ハンマー仕上げされた金属製パイプ

プリンシパル系の音は、よく響くオルガンの中で中心となる、響きの基本をなす音です。コンサートホールや教会で表に見えているパイプはプリンシパル系のパイプで、音のコーラスをつくるのもこの音です。

フルー管の発音イメージ

フルー管の発音イメージ

パイプオルガンのパイプは、材質も大切ですが、同様に吹き口の形状も大切です。吹き口の形状には、大きくフルー管とリード管の2種類があります。
フルー管はリコーダーと同じ構造です。下から入った空気は、スリットを通過して板状の流れとなり、唄口の上部に当たってパイプの内側と外側に交互に流れ出ます。この周期的な運動とパイプ全体の空気が共鳴して音が出るのです。パイプを太くするとフルートの音色に、細くすると弦楽器の音色に近づきます。
楽器の中では下から風が通るので唄口は下にありますが、上下を引っくり返せばリコーダーとそっくり。人が息を吹き込めば、プーッと鳴ります。

木製のフルー管の唄口の下を削るときは、四角い板を外し、ブロックと呼ばれる部分を少し削ります。これは下からの風が通る道です。この一削りで楽器が生きるか死ぬかが決まります。

金属製パイプの唄口

金属製パイプの唄口

木製パイプの唄口

木製パイプの唄口

削りすぎたら元に戻せないので責任重大です。
また、パイプの素材にかかわらず、唄口の角度もとても大事なのです。

唄口の下側の構造

唄口の下側の構造

ブロックの一削りで音の運命が決まる

ブロックの一削りで音の運命が決まる

リード管の発音イメージ

リード管の発音イメージ

吹き口のもう1種類の形状となるのが、リード管です。リード管は、空気の流れでリードを振動させ、パイプ全体を共鳴させて音を出すしくみ。金管楽器のような華やかな音からファゴットのようにこもった柔らかい音まで、リードの形や厚さ、パイプの形状で音色が変えられます。
リードはまっすぐではなくて、少し反りがついています。そのため、リードとリード受けの間には隙間があって、そこから空気が通ります。空気が通るとき、にリードは風に巻き込まれて閉じようとします。閉じたリードは、リード自体の反りによってふたたび隙間ができます。このように開けたり閉じたりの振動を繰り返すのです。

風が当たったリードの振動は、シンセサイザーでいうパルス波の状態になり、豊かな倍音が生まれます。リードの先に付いている共鳴管が自然な円すい管なら、豊かな倍音が生かされます。変わった長さや形状の共鳴管の場合は、特徴的な音色となります。
このように、リード管によって多彩な音色が出せるようになっています。

リード管のブーツ部分(左)と、中を取り出したところ

リード管のブーツ部分(左)と、中を取り出したところ

リードとリード受けの間に隙間が見える

リードとリード受けの間に隙間が見える