パイプオルガンのできるまで
パイプオルガンの発注から完成まで

パイプオルガンを建造する際には、その理念を明確にすることから始めます。つまり、どういう楽器をつくりたいか、ということです。
パイプオルガンは国や時代によって製作技法が違います。フランス、ドイツ、イギリス、スペイン、イタリアなど、ヨーロッパ各国で教会を中心に何百年もかけてそれぞれのスタイルが確立されていますし、音楽のスタイルにも古いものから新しいものまで違いがあります。そのため、たとえばフランスの19世紀のロマン派のスタイルの楽器がつくりたいとか、あそこの教会のああいうタイプがよいなど、まずは求めている楽器をはっきりさせる必要があります。

ホールに設置する場合はコンサートでの演奏目的なので、そのホールではどのような時代のどのような音楽を主にやりたいかを相談します。このとき、オルガン設置委員会などが発足し、大学の先生や建築家などの専門家も入って理念を決めていきます。その空間の響きや収容人数に合うかどうかも検討します。
キリスト教の学校や教会では礼拝が目的なので、仕様は明快です。礼拝では最初に前奏があり、賛美歌を歌い、お説教があり、後奏となります。その間ずっとオルガンは使われますが、宗派によって仕様が決まっており、中には♯4つ以上の調では変なうなりが出て音楽が成立しない楽器もあります。特定の調性を美しく弾くためにつくられるわけです。

フランス19世紀のスタイルを持った音が響く新宿文化センター

フランス19世紀のスタイルを持った音が響く新宿文化センター

仕様が決まったら、条件に合った海外のオルガン製作者を探して希望を伝え、製作者とともにパイプオルガンの仕様書を作って、発注したお客様に提案します。正式な発注を受けたら、現地の工房で製作し、仮組みを行います。
いちど仮組みしたあとに解体し、パーツを輸入して設置場所へ運んで組立工事を始めます。このときはオルガン製作者も来日して現場に立ち合い、最後の調律まで協同でつくり上げていきます。
パイプオルガンの規模によりますが、完成までは最初の提案から5年ほどかかります。設置してからも音は育ち、年々、確実に音が響くようになるのです。

大阪市いずみホールでの組立風景

大阪市いずみホールでの組立風景