パイプオルガンのお手入れ
メンテナンスも職人技

ピアノを調律する際、響板の上を掃除すると音がよくなるといいますが、パイプオルガンでもパイプの内部に入ったほこりを取ると音がクリアになり、よく響くようになります。空気と接する振動面が音を放出するのを、つもったほこりが妨げていたのでしょう。掃除は10年に1回ほど行いますが、10年間溜まったほこりの厚さも相当なもの。掃除することで、かなり音が変化します。

錫(すず)と鉛の合金である金属パイプは、とてもデリケート。コツンとぶつけるだけで凹んでしまい、ぎゅっと握れば変形します。もし手に取る機会があったら、慎重に扱いましょう。

1700年代につくられたオルガンともなると、金属パイプの表面は酸化被膜に覆われて、蟹の甲羅のようにパリパリしています。色も黒っぽくなっていますが、これを磨くと独特の歴史的な音がすっかり変わってしまいます。パイプの表面は時の流れに任せ、あまり手を加えない方がよいようです。
また、手で直接触ると指紋も付くし、さびてしまうので避けましょう。パイプに、さび止めとして透明なニスを塗る工房もあります。

現代のものでも古いものでも、ある部品が壊れたら別の部品と取り替える必要があります。目の前の楽器に合うように、手持ちのバネや木片、接着剤やネジなどを使ってその場で部品をつくり、解決していきます。やっかいなのはオルガンによってカラクリ的な部分があること。謎解きをする感覚で製作者の意図を汲み取り、修理することになります。修理は、楽器を通して製作者と対話をするような作業なのです。

車やオートバイと同じように、パイプオルガンも分解して修理するオーバーホールが行われます。ただ、その単位はとても長く、建ててから15年後から25年後。そのため、建造に関わった人がすでに引退していることもしばしばです。何百年も生きる楽器なだけに、次の世代へ代々手入れが受け継がれていくのです。