ピアノのできるまで
ボディを作る

まず側板をつくるところから見てみましょう。
最初の写真は、木目のモデルの一番外側に貼るマホガニーという木材。これを何枚か継ぎ合わせて、約4.5メートルの長さの板にします。また内側には重ねて貼り合わせる板も同様にして用意します。貼り合わせる板の枚数は、モデルにもよりますが、6枚から10枚です。
貼り合わせを完了してできた側板用の板を、ピアノの形の大きな型に押し込んで油圧や高周波を使ってプレスします。その際、外側には後で塗装の仕上がりがよくなるように樹脂含浸紙(じゅしがんしんし)という紙を貼ります。
側板の内側の、枠になる曲練支柱(まげねりしちゅう)という部分も同じようにつくります。

木目のモデルの一番外側に使われるマホガニー材

木目のモデルの一番外側に使われるマホガニー材

継ぎ合わされた側板用の単板

継ぎ合わされた側板用の単板

プレス後の側板

プレス後の側板

続いて、骨組みとなる真っすぐな直支柱(ちょくしちゅう)を、曲練支柱と組み合わせます。アリ組という昔ながらの方法で互いにはまり込むようにはめ、表面を平らに削ります。
曲練支柱には後で響板が載るので、そのための加工をしておきます。まず、響板は「むくり」といって微妙に上側が膨らんでいるので、その傾斜に合わせて曲練支柱の表面を削っておくのです。また、響板の裏には響棒が何本も張られているため、響棒の入り込む溝も彫っておきます。そして、ある温度、湿度で寝かせておいた側板と、曲練支柱を高周波加熱により合体させます。

直支柱を曲練支柱に組み込む

直支柱を曲練支柱に組み込む

凹凸に組み合わせるアリ組

凹凸に組み合わせるアリ組

曲練支柱に彫られた響棒用の溝

曲練支柱に彫られた響棒用の溝

側板と曲練支柱を接着する

側板と曲練支柱を接着する

この後、側板にロボットで塗装をします。まず下塗り塗料を吹き付けて、塗料が早くしっかり固まるように保温。さらに、霧のように粒子の細かい上塗り塗装もおこない、研磨の工程も経て表面を美しく仕上げていくのです。

ロボットによる下塗り

ロボットによる下塗り

複雑な曲面も美しく研磨する

複雑な曲面も美しく研磨する

続いてピアノの心臓部、音にとって重要な響板の工程です。
響板の材料にはスプルース(マツ科の木)やエゾ松を製材して厳選し、天然乾燥と人工乾燥を経て含水率を整えてから使います。板材を何本も貼り合わせる巾(はば)ハギをおこない、響板の形にカットして厚みも整えた後、ピアノの送り先の気候条件を考慮した乾燥度合いに乾燥させます。
そして、響板の下側に響棒を貼っていきます。響棒は響板の木目と直角になるように貼るのですが、これは響板全体に均一に振動が伝わるようにするためと、横方向に強度が弱いので補強する意味もあります。響棒を付けたら、反対の面に長駒と短駒を取り付けます。

長駒と短駒を響板の上側に取り付ける

長駒と短駒を響板の上側に取り付ける

コンサートグランドピアノの響棒を削るようす

コンサートグランドピアノの響棒を削るようす

できあがった響板を曲練支柱に張り込み、金属製のフレームを取り付ければ、ボディがほぼ完成です。
フレームは、基本的には鉄製ですが、音のために他の金属もいくつか配合しています。それを溶かして砂で作った型に流し込み、冷えて固まればできあがり。フレームの重さは100~150キロくらいになります。

フレームの取付け

フレームの取付け