リコーダーの成り立ち
リコーダーの歴史~全盛の時代~

現代のものにもっとも近い形のリコーダーが記録として残されている本の中には、大小3本のリコーダーが紹介されています。
また、18世紀ドイツの音楽理論家、M.アグリコーラの「ドイツの器楽音楽」の中では4種類のリコーダーが、また17世紀ドイツの音楽理論家M.プレトリウスの「音楽大全」の中には9種類のリコーダーが紹介されています。この中でもっとも小さいリコーダーは14cm、大きいものでは2mものリコーダーも含まれています。

17世紀のリコーダーは、管の構造が円筒形で、音色は、現在用いられているリコーダーよりは幅の広い、刺激の少ない音色をもっていました。リコーダーだけのアンサンブル「ホウル コンソート」、または他の楽器とのアンサンブル「ブロークン コンソート」で演奏され、人の声と融合するアンサンブル楽器としても、大きな位置を占めていました。

「世界の楽器百科図鑑」に描かれたリコーダー

「世界の楽器百科図鑑」に描かれたリコーダー

これらの時代の楽曲は、明らかな楽器指定はされないのが普通で、「リコーダーのために」と指定された曲はありません。「パヴァ―ヌ」、「ガリヤルド」、「アルマンド」等各種の舞曲や、「ファンタジア」、「リチェルカーレ」などの形式の音楽が、リコーダーのみで、または他の楽器を加えたアンサンブルで演奏されていました。

リコーダーを演奏する様子

リコーダーを演奏する様子

バロック時代(1600年~1750年)になると、リコーダーはもっぱらソロ用の楽器として用いられるようになってきます。
当時のアンサンブルは、弦楽器(特にバイオリン)を中心にした合奏に独奏楽器が1本ないしは数本つくといった「協奏曲」「合奏協奏曲」のかたちや、通奏低音(1本の低音楽器とチェンバロなどの和音楽器)に1本ないし数本の楽器がついた「組曲」や「ソナタ」の楽器編成がとられていました。リコーダーの演奏は、当時のアンサンブルと深い関係をもっています。

そして、楽器の音色も力強く、刺激の強いものが求められ、バロック時代(特に後期バロック時代)のリコーダーは円すい形の管となりました。その結果、高い倍音が豊かに、そして、澄んだきらびやかな音色をもつようになります。この時代は、リコーダーのための「ソナタ」や「協奏曲」が数多く作曲され、リコーダーがもっともはなやかに活躍した時代でした。

ドイツの音楽家、プレトリウスの書いた本の中のいろいろなリコーダー

ドイツの音楽家、プレトリウスの書いた本の中のいろいろなリコーダー

たとえばG.F.ヘンデルは「7つのソナタ」「2つのトリオソナタ」そのほか、「オペラ」や「オラトリオ」の中の多くの場面にリコーダーを、また、J.S.バッハは「ブランデンブルグ協奏曲」No2、No4の中でリコーダーを独奏楽器として用いているほか、多くの「カンタータ」の中でオブリガート楽器として用いています。
そのほかG.P.テレマンは、リコーダーのために数多くの「ソナタ」「トリオソナタ」「協奏曲」、特に有名な「イ短調の協奏曲」などを書いています。
イタリアでも、A.スカルラッティほか、A.ヴィヴァルディが多くの「ソナタ」「トリオソナタ」「協奏曲」(特に「ソプラニーノリコーダーと弦楽合奏のための協奏曲ハ長調」が有名)を書いています。
まさに全盛期といっても過言ではありません。

リコーダー

しかし、バロック期の後、リコーダーはフルートに立ち位置を奪われ、音楽史の中から一度姿を消してしまいます。モーツァルトや、ベートーヴェンの作品が有名な古典派期ごろから、オーケストラが発達し始め、リコーダーの音量では太刀打ちできなくなってしまいました。その上フルートは表情もつけやすく使い勝手が良かったため、リコーダーは次第に人気がなくなってしまいました。それから約150年の間、リコーダーのための作品はほとんど書かれていません。