エレクトーンのマメ知識
名指揮者を満足させたオルガンサウンド

現在はパイプオルガンを備えたコンサートホールも多くなりましたが、1980年代までの日本では、パイプオルガンそのものがめずらしい存在でした。ところが、クラシックのオーケストラ曲のなかには、パイプオルガンがなければ演奏できない名曲がいくつもあります。たとえば、サン=サーンスの交響曲第3番、レスピーギの交響詩「ローマの松」、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」、マーラーの交響曲第2番「復活」や交響曲第8番などなど。こうした作品をパイプオルガンのないホールで演奏する際に、かつてしばしばおこなわれていたのが、エレクトーンでオルガンのパートを演奏するという方法でした。
1978年のこと。日本の音楽界を驚かせるニュースがありました。20世紀を代表する名指揮者でありながらレコーディングを一切おこなわず、「幻の指揮者」と呼ばれていたセルジュ・チェリビダッケが日本のオーケストラ(読売日本交響楽団)を指揮することになったというのです。チェリビダッケは練習の厳しさでも知られ、気に入らなければコンサートのキャンセルも辞さないという気むずかしさ。そのチェリビダッケが選んだプログラムのなかに、なんとレスピーギの「ローマの松」が…。押さえていたホールにはパイプオルガンがありません。そこで起用されたのが、当時パイプオルガンの音色を忠実に再現することで定評のあったF-1型のエレクトーン。演奏会は大成功を収め、チェリビダッケもエレクトーンのサウンドにたいへん満足したということです。
(参考資料:「エレクトーンおもしろ雑学事典」ヤマハミュージックメディア)