エレクトーンのマメ知識
神棚と間違えられたパイプオルガン

日本で最初に民間で行われたパイプオルガンのコンサートは、明治24年から東京の本郷中央会堂というキリスト教会で行われた定期演奏会だったといわれています。使用された楽器は、カナダ製の大型リードオルガンを、同教会にボランティアの布教師兼オルガン奏者として赴任していたエドワード・ガントレットが、パイプや工具を母国から取り寄せ、みずから改造してつくり上げた本格的パイプオルガンでした。そのあまりに堂々とした威容に、会堂に初めて訪れた老婆はオルガンを神棚と間違え、思わず賽銭を投げて礼拝してしまったそうです。
まだ東京音楽学校(現在の東京芸術大学)にもパイプオルガンのない時代であり、当時の一流演奏家であった滝廉太郎や島崎赤太郎もしばしばこのオルガンを弾きに訪れました。ところが、オルガンのふいごに風を入れる係の男が、気に入らないとコンサートの最中に風入れをやめてしまうので演奏家たちは大いに悩み、1曲の風入れごとに15銭の給料を支払うことになったそうです。
(参考資料:赤井励著「オルガンの文化史」 1995年 青弓社)

神棚と間違えられたパイプオルガン