ティンパニのしくみ
ティンパニの構造

ティンパニのヘッドには、古くから仔牛やヤギの皮などが用いられてきました。皮のヘッドの場合、硬い背骨の部分が真ん中を通るように作られていて、これが振動の節の部分を担います。実は、プラスティック製ヘッドにも、皮と同様、張るときの向きがあります。プラスティックのシートを延ばして製造する際、延ばす方向に目では見えない分子レベルでの縦目が生じます。その縦目をティンパニの横方向に張るのが音には理想的。ヘッドに印刷してある製造メーカーのマークはその目印として入っていて、通常、奏者の正面に来るようにセットします。

メーカーのマークは縦目と平行

メーカーのマークは縦目と平行

調整の仕方は、ティンパニのスタイルによります。
手締め式はドラムと同じで、チューニングボルトを1つ1つ手で締めます。ハンドル式は、チューニングハンドルを回すだけで一度に調整できます。そして、ペダル式は、足でペダルを動かしてヘッドの張力を変え、音程を変えます。

ペダル式は、ペダルを踏むほどヘッドが張って高い音に、ゆるめるほど張りが弱くなって低い音になる機構になっています。演奏をするには、ペダルによって調整したヘッドの張り具合(音程)を保持する機能が必要です。

バランスアクション式ペダルティンパニの場合ですと、ペダルを踏み込むと同時にベース内部にセットされているスプリング(バネ)が強くなる仕組みになっています。これはスプリングの張力とヘッドの張力が互いに均等に釣り合うようにしてペダルを静止(保持)させるものです。
他にも、音程を調整したペダルを、ラチェットやクラッチシステムで固定(保持)する方式のものもあります。

ペダル式の音程変換メカニズム

ペダル式の音程変換メカニズム

フープを上下させて音程を変更するペダルティンパニの場合、ケトルが動いてしまうと音程変更が不安定になります。そのため、サスペンションリングという金属の輪でケトルを支える必要があります。また、サスペンションリングで宙づりにすることでケトルがフレームなど他の部分と接触しなくなり、より良い振動を実現しています。

ヘッドの張りが変わる仕組み

ヘッドの張りが変わる仕組み

ティンパニの音に音程を感じるのは、ドラムと構造が異なるから。ドラムは表裏2枚のヘッドがあり、表のヘッドを叩いたときの振動は、ドラム内の空気を通して裏のヘッドに伝わります。ヘッドが互いに影響をおよぼし合い、ヘッド全体が大きく揺れる振動(図の左)が起こりやすいのです。この振動がドラムのドン!というアタックの強い音を生み出します。

一方、ティンパニでは、ヘッドを叩いたときの振動は、ケトルの中の空気の振動と干渉し合います。これによって、ヘッド全体が揺れる振動が起こりにくく、ヘッド上で上下互い違いに揺れる振動(図の右)が複数起こります。ティンパニのケトルは、これらの振動が整数倍の周波数で起こるように設計されています。これが、ティンパニの音に音程感を与えているのです。両者はそれぞれ異なった役割を持つように、それぞれ異なった構造をしているのです。

ドラムとティンパニの振動の違い

ドラムとティンパニの振動の違い