ティンパニのしくみ
ティンパニの構造

ティンパニのヘッドには、古くから子牛の皮が用いられてきました。大人の牛では厚すぎるそうで、1台に1頭の皮が張られます。硬い背骨の部分が真ん中を通り、振動の節の部分を担います。ちなみにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ではヤギの皮を使うとか。

本皮製のヘッドは、プラスティック製と比べて顕微鏡レベルの配列が均一できめ細かく、音色や音質が良いのが特徴です。しかも演奏後、叩いた部分に負荷が掛かっていびつに伸びても、時間が経てばちょうど良い状態に再生してくれます。動物の個体としては死んでいても、皮自体は生きているのです。
ただし、湿度や温度の影響を受けやすく、照明が当たるだけで皮が張って音程が上がるので、絶えず微調整が必要です。

伸びても自然に元に戻る子牛の皮のヘッド

伸びても自然に元に戻る子牛の皮のヘッド

湿度や温度の影響を受けにくく管理しやすいプラスティック製のヘッド。実は、プラスティック製ヘッドにも、皮と同様、張るときの向きがあります。シートを延ばして製造する際、延ばす方向に目では見えない分子レベルでの縦目が生じます。その縦目をティンパニの横方向に張るのが音には理想的。革に印刷してある製造メーカーのマークはその目印として入っていて、通常、奏者の正面に来るようにセットします。

メーカーのマークは縦目と平行

メーカーのマークは縦目と平行

調整の仕方は、ティンパニのスタイルによります。
手締め式はドラムと同じで、チューニングボルトを1つ1つ手で締めます。ハンドル式は、全てのチューニングボルトがチューニングハンドルを回すだけで一度に調整できます。そして、20世紀に誕生したペダル式は、足でペダルを動かしてヘッドの張力を変え、音程を変えます。

ペダル式は、ペダルを踏むほどヘッドが張って高い音に、ゆるめるほど張りが弱くなって低い音になる機構になっています。演奏をするには、ペダルによって調整したヘッドの張り具合(音程)を保持する機能が必要です。

バランスアクション式ペダルティンパニの場合ですと、ペダルを踏み込むと同時にベース内部にセットされているスプリング(バネ)が強くなる仕組みになっています。これはスプリングの張力とヘッドの張力が互いに均等に釣り合うようにしてペダルを静止(保持)させるものです。
他にも、音程を調整したペダルを、クラッチシステムで固定(保持)する方式のものもあります。

ペダル式の音程変換メカニズム

ペダル式の音程変換メカニズム

ケトルが動いてしまうと、音程変更がうまくできなくなってしまいます。そのため、サスペンションリングという金属の輪でしっかり支える必要があります。また、ケトルは触れる物が少ない方が振動を妨げなくて良いので、サスペンションリングで支えて宙づり状態にすることで、他の部品は一切当たらない構造を実現しています。

ヤマハのペダルバランススプリング機構は、 ヘッドの張力とペダルスプリングの張力を適度の摩擦力で安定させています。さらにてこの原理を応用した5種類のリンク機構で、一層スムーズなペダルアクションを実現しています。

ヘッドの針が変わる仕組み

ヘッドの針が変わる仕組み

ティンパニでは音程がつくれるのに、ドラムでつくれないのは、構造が違うから。ドラムは円筒型で裏表2枚のヘッドがあり、表のヘッドを叩いたときの振動は裏のヘッドに当たって、表裏と往復するうちに様々に変化します。振動の変化が多彩で、安定した音程は出せません。

一方、ティンパニは、底がフタをされていて、しかも丸底。これがきちんと決まった高さの音、楽音をつくれる鍵となります。丸いケトルの中に閉じ込められた空気がドラムの場合のような複雑な振動を妨げ、規律の正しい整数倍の膜振動が得られやすくなると言われています。

ヘッドの針が変わる仕組み

ヘッドの針が変わる仕組み

円筒と丸底の違いは、密閉されているかどうかの違いです。
密閉されているといっても、実は、ティンパニの底には小さな穴が開いています。この穴が小さいと音がよく伸び、大きいと音の伸びが短くなって、叩いたときのタッチが軽くなります。穴の下に手を入れると、空気が抜けるのがわかります。

ケトルの底の穴

ケトルの底の穴