ティンパニのできるまで
ケトル完成までの道のり

銅100%の純銅です。身近では10円玉に銅が使われていますが、95%が銅で残りは亜鉛と錫(すず)が混ざっています。他にもFRP(Fiber Reinforced Plastic/ガラス繊維強化プラスティック素材)やアルミニウム製のケトルもあります。
銅には伸びやすく形を変えやすい性質があり、音も深く響くので、ティンパニのケトルに昔から使われてきました。ただ、ケトルのつくり方は昔と今では様変わりしています。

まずは厚さ数ミリの平らな銅板を、つくるケトルのサイズに合わせて丸くカットします。回転させながらカットするときに、真ん中に小さく穴が開きますが、それが底になるわけです。その穴は後で大きくして形を整えます。

銅板を丸くカット。

銅板を丸くカット。

その際、中央に穴が開く

その際、中央に穴が開く

続いて、へら絞りの工程です。大きな機械で平らな銅板と丸い金型をぐるぐる縦方向に回転させながら、ローラーで銅板を金型に押し当てます。これによりだんだん丸みを帯びてきます。

銅板を機械にセット

銅板を機械にセット

少し丸くなってきた様子

少し丸くなってきた様子

途中まで絞ったら機械から外し、焼鈍(しょうどん)をします。銅は加工硬化が早いので、こうしないと表面にしわが寄ったり割れてきたりしてしまうのです。

途中まで絞った形はUFOみたい!

途中まで絞った形はUFOみたい!

銅は柔らかい素材ですが、加工していくと変質して硬くなります。それを加工硬化と呼びます。 例えば、針金を何度も曲げたり伸ばしたりすると、ある時ぽきっと折れますよね。ガムはずっと噛んでいると硬くなりますし、うどんやそばは打てば打つほど腰が出てきます。加工を続けて材料に負荷が掛かると、加工硬化が起きるのです。そのため、加工時には、火で柔らかくする必要があります。

この後、さらに形を絞っていきます。そして表面をなだらかに整え、エッジを立ててから寸法に合わせて端をカットします。ここまでが「へら絞り」の工程です。

ほぼ完成形、これからエッジを直角に立てる

ほぼ完成形、これからエッジを直角に立てる

形ができたらまた焼鈍して、金属が戻ろうとする力を逃がして安定させます。焼くと空気中の酸素と反応して表面に酸化被膜ができ、色がまだらになりますが、表面を研磨すればきれいになります。この後、バフでつるつるに磨き上げます。

内側を研磨中

内側を研磨中

サンドペーパーを替えながら外側も研磨

サンドペーパーを替えながら外側も研磨

いよいよ研磨です。ティンパニは演奏の際、ケトルの中の空気も振動します。ケトルの内面を磨いてなめらかにすることで、濁りのない、立ち上がりのよい音を実現します。

上からチェーンで吊って洗浄

上からチェーンで吊って洗浄

磨いた後は洗浄です。丸底に開いた穴に治具を引っ掛けて上から吊るし、水槽に浸けながら洗っていきます。中に空気が入るようにして上下に細かく動かすと、泡がぶくぶく出てきます。

そして表面の水分を拭き取って自然乾燥させます。その後は塗装。ホコリ厳禁の空間で、クリア塗装をします。これでピカピカのケトルの完成です。

塗装を終えた銅製ケトル

塗装を終えた銅製ケトル

この銅製ケトルの全面をハンマーで打って硬くした、ハンマードケトルもあります。一発一発ていねいに手で打って硬くしていきます。
※モデルによって機械打ちと手打ちを併用しながら生産しています。

ハンマーで表面を打って硬く

ハンマーで表面を打って硬く

材質を硬くすることで、音程感をさらに明確にすることができます。このとき、均一に美しく打つのにとても神経を使います。変な跡がつかないようにハンマーの打面もしっかり磨くためか、10年も使い続けているとハンマーの先がぐんと短くなります。

使い込まれたハンマー

使い込まれたハンマー

最後は組み立てです。ベースの裏側、つまり床に一番近くなる部分をひっくり返して、棒状のテンションロッドを中央の丸い金具から放射線状に付けていきます。ここが音程を変える役割を担う心臓部に当たります。

テンションロッドの角度を調整中

テンションロッドの角度を調整中

テンションロッドは、ヘッドの張り具合を変えるチューニングロッドと連動しています。テンションロッドの角度をきつくするとヘッドが引っ張られて音域の上の方の音がよく出るようになりますが、ペダルは重たくなります。それで音と操作性を考えて角度を微調整しています。

黒い棒がテンションロッド

黒い棒がテンションロッド

中央の銀色の棒がチューニングボルト

中央の銀色の棒がチューニングボルト

また、8本全てのテンションロッドのバランスをきっちりそろえ、ヘッドの張り具合が均一になるようにします。1本でもずれていると、ペダルを踏んだときスムーズに動かず、違和感が生じてしまうからです。

裏が終わったら上下を戻して、チューニングインジケーターにつながる線を接続します。自転車のブレーキと同じく中にワイヤーが通っていて、ペダルを踏んだ分ワイヤーが引っ張られ、目盛が動きます。

ペダルの下のボールは、ヘッドが張ってある状態にするためにあります。楽器になってしまえばヘッドの張力とペダルの奥のバネの力が引っ張り合いますが、今はヘッドがないのでペダルにボールを噛ませておいて、ヘッドを付けたら外すことになります。ヘッドの張力の代わりなのですね。

内側にケトルをセットし、ヘッドを張ればひとまず完成です。

シャフトに線を付けるとき、ペダル下にはボールが!

シャフトに線を付けるとき、ペダル下にはボールが!

最後は肝心のチューニング。チューニングメーターを片手にヘッドの端をぐるりと叩いていき、どこも同じ音が鳴るか確かめます。ペダルを踏まない状態の最低音もチェックして、合ってなければ再度ベースを裏返して、テンションロッドを微調整します。

念入りにチューニング中

念入りにチューニング中