チェレスタのマメ知識
奈良の鹿がヨーロッパで活躍

1993年にヤマハはオーストリアのウィーン・フィルハーモニー管弦楽団へチェレスタを納品しました。その後、グロッケン版もつくれないかという依頼があり、音板の厚みをチェレスタよりも厚くして、表面を鍍金して改良。ハンマーにもいろいろ工夫をしました。
ハンマーの先は、はじめは真ちゅう、後で樹脂に変えましたが、音色は今ひとつ。「マレットの先は昔、象牙だった」と聞き、象牙も試して好感触を得ましたが、象牙はワシントン条約により海外へ送れません。そこで思い浮かんだのが、「ちゃんちき」でした。ちゃんちきとは日本のお祭りで叩く伝統的な打楽器で、このバチの先が鹿の角でできているのです。
早速、鹿の角を入手して楽器に取り付けてみたところ、音に芯も響きもあり、象牙に勝るとも劣らない音になりました。
また、それまでの鍵盤型グロッケンシュピールは音量のコントロールができませんでしたが、ヤマハのモデルはグランドピアノのアクションを採用しているため、pp(ピアニッシモ)からff(フォルテシモ)まで自由自在に出すことができ、演奏者にも指揮者にも大満足していただけました。 そして迎えた、2005年8月のザルツブルグ音楽祭。リッカルド・ムーティ指揮の「魔笛」の演奏で、奈良の鹿の角が打つグロッケンシュピールの音が会場に響き渡りました。日本とヨーロッパの伝統文化が合わさって観客を魅了したのです。

音楽祭の総監督から贈られた感謝状

音楽祭の総監督から贈られた感謝状