チェレスタのしくみ
いろいろな構造のチェレスタ

ドイツの老舗メーカー、シードマイヤー製のチェレスタは、ミュステル社の楽器より音量があり、低音域も増えています。鍵盤を動かして音板に伝えるしくみに、パイプオルガンの構造であるトラッカーとローラーボードを用いているのが特徴です。
共鳴箱は4段組みに配置されています。上段に並ぶのが低音域、背面から見て右下が中音域、中央と左下は高音域の共鳴箱となります。

シードマイヤー製のチェレスタ

シードマイヤー製(1988年ごろ)

木琴や鉄琴と同じように、上から打つというのが元々のチェレスタの構造です。ミュステル社のものもシードマイヤー社のものも、音板をハンマーで上から打ち、共鳴箱はその下にあるという楽器の構造自体は変わりません。
しかし、1992年にヤマハが発売したのは、これまでのチェレスタと異なり、ハンマーを下から打つ構造のものでした。

ヤマハ製のチェレスタ

ヤマハ製(1992年)

あえて下から打つようにしたのは、グランドピアノのアクションを載せたかったからです。これまでのチェレスタは強く弾かないと音が鳴らず、音の強弱の差が出せませんでした。奏者が気持ちを込めて演奏したくても、音に表情が付けられなかったのです。
そのためヤマハでは、奏者の意向を最大限に汲んで音にできるシステムとして、グランドピアノのアクションを採用。弦をハンマーで下から打つグランドピアノと同様に、下から音板を打つ機構にしました。それに伴い、共鳴箱は音板の上側に配置したため、中身は従来のチェレスタから大変身しています。
この機構にしたことで、ヤマハのチェレスタではpp(ピアニッシモ)からff(フォルテシモ)まで音の強弱が思い通りに出せるようになり、表現力が高まりました。鍵盤のタッチも良くなり、速い楽曲でも弾きこなせるようになりました。また、これまでのチェレスタではグリッサンド(指をすべらせるように鍵盤を移動させ、音階を変える奏法)を弾こうとしても指が痛くなってできませんでしたが、このチェレスタでは楽に行えます。

上から共鳴箱、音板、アクション、鍵盤

上から共鳴箱、音板、アクション、鍵盤

このチェレスタも、できるだけ元のままのアクションを使えるように工夫して設計していますが、音板の幅とハンマーシャンクの形状はこれまでと多少異なります。

音板の幅は音の高さによって変わりますが、一般的に20~30ミリほど。グランドピアノに張られた3本の弦の幅に比べるとはるかに広く、アクションが一列に並べられないため、上段に白鍵、下段に黒鍵というように、上下二段に分けています。
ハンマーで音盤を打つ仕組みから、縦方向のアクションはグランドピアノとまったく同じですが、チェレスタ用に音板の幅に合わせて横方向のアクションは独自に設計されています。ハンマー間に隙間があるのはそのためです。