音楽文化の振興

ヤマハグループは、世界各国で開催されるピアノコンクールをはじめ、国内外における各音楽コンクールやクリニックなどにおいて、高い芸術性を追求する人々を楽器のサポートのみならず運営面などさまざまな側面から支援し、音楽文化の普及と発展に貢献しています。
若手音楽家や音楽家を志し学ぶ方々に対しては、国内外の各地域で奨学金制度を設けているほか、音楽教育機関と連携し、教育カリキュラムや指導者向けセミナーを提供するなどの支援を続けています。
「音楽の都 浜松」実現の一環として1995年から浜松市などと共催でスタートした「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル」は、管楽器に特化した世界最大規模の音楽祭です。世界的に活躍する管楽器アーティストを迎え、演奏家を目指す若手音楽家育成のための「アカデミー」と、地域の一般市民の方々が気軽に管楽器の響きを楽しんでいただく「フェスティヴァル(コンサート)」を開催することで、地元浜松での音楽文化の交流と世界で活躍する音楽家輩出を主な目的にしています。

浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル
ヤマハ管楽器新人演奏会
星海音楽学院(中国)

ヤマハグループでは国内外の各地域で、学校における音楽教育の支援活動を行っています。楽器のサポートをはじめ音楽教師への指導方法の講習、音楽に関する情報提供などを通じて、授業内容の充実に貢献するなど地域に根差した活動を展開しています。

楽器を演奏する機会を提供する「スクールプロジェクト」

ヤマハは、楽器演奏の楽しさをより多くの子どもに体験してもらうため、2015年より新興国を中心に公教育の中で器楽教育をサポートする「スクールプロジェクト」を展開しています。
器楽教育は、その教育的効果から世界中の学校で広く採用されていますが、中には、設備・指導者不足、指導カリキュラムなどの問題から音楽の授業に導入されていなかったり、質が十分ではなかったり、国によって状況はさまざまです。ヤマハでは、こうした世界中の子どもたちが公教育の中で質の高い器楽演奏体験の機会に等しく恵まれることを目指しています。
2021年度までに、7カ国(マレーシア、インドネシア、ベトナム、インド、ブラジル、UAE、エジプト)約5,200校で累計129万人の子どもたちに器楽演奏の機会を提供しています。
2021年より展開をスタートしたエジプトの「初等教育への日本型器楽教育導入事業」は、文部科学省が進めている「日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)」の2020年度パイロット事業の応援プロジェクトの一つに選定されているほか、国際協力機構(JICA)と「JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業」において業務委託契約を締結、『JICA-SDGsパートナー』※1にも認定されています。
また、同国では、「日本式教育」の特徴を取り入れた公立学校「エジプト・日本学校(EJS)」を設置し、日本人の校長経験者をスーパーバイザーとするなど、非認知能力を育む日本の教育に非常に高い関心が寄せられています。今後、東京学芸大こども未来研究所とともに器楽教育を通した非認知能力※2の測定手法検討を経て、エジプト国が抱える教育分野の課題に向き合うとともに、同国の音楽文化・教育への貢献の可能性を探っていきます。

  • ※1 日本政府(SDGs推進本部)が決定するSDGs実施指針やSDGsアクションプランの一層の進展を目的としてJICAが2020年7月に創設。JICAとともにSDGsの達成に取り組んでいる企業・団体をパートナーとして認定するもの
  • ※2 非認知能力:「目標の達成」「他者との協力」「情動の抑制」など、思考、感情や行動パターンについての能力。「読み書き」「計算」などに代表される認知能力を促進することがあり、大人になってからの人生にも影響を及ぼすと言われている
ベトナムでのリコーダーレッスン
エジプト・日本学校での授業の様子(写真提供: EJS 10th of Ramadan校 )
School Project
[ ロゴ ] Japan. Committed to SDGs
[ ロゴ ] EDU-Portニッポン
JICA-SDGs パートナー認定証

中東・アフリカ地域における音楽教育プログラム

西洋音楽教育が浸透していない中東・アフリカ地域を営業管轄とする現地法人ヤマハ・ミュージック・ガルフ(以下、YMGF)では、現地事情に合わせた学校教育における音楽普及活動を展開しています。
中東・アフリカ地域では、文化の違いや指導者不足などから、音楽の授業を学校のカリキュラムに取り入れる国が非常に限られています。YMGFでは、器楽教育を通じて子どもたちの情操教育や成長を支援するため、2012年に学校音楽教育普及プロジェクトを始動。各国の教育関係者に日本の小学校の授業を視察してもらうなど、音楽教育の重要性を訴求するほか、現地指導者の育成など、現地代理店と協力して活動の展開を進めています。
2016年に南アフリカで1校目をスタートして以来、2022年3月期までに、南アフリカ、ナイジェリア、クウェート、UAE、ケニア、モロッコ、ウガンダの7カ国77校、延べ約7,500人にリコーダーの授業を実施するなど、活動の拡大を図っています。

南アフリカでのリコーダーレッスン
ナイジェリアでのリコーダーレッスン

学校吹奏楽におけるバンドクリニックと指導者講習

ヤマハ楽器音響(中国)では、2010年から主要都市を中心とした学校の吹奏楽団を対象に、国内外の講師を派遣して演奏の指導を行うバンドクリニックを実施しています。2022年3月期は4会場で開催し、約400人の生徒たちが指導を受けました。また、例年は一般の音楽教師の吹奏楽指導能力向上のために日本から講師を招き吹奏楽指導者講習会を開催していますが、今年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により開催できなかったため、現地有力指導者を起用した講習会を実施し、約500名の指導者が参加するなど、指導者の育成にも貢献しています。

バンドクリニックの様子
指導者講習会の様子

学校でのバンドメンテナンスセミナー

韓国では、学校の放課後課外活動としてバンド(吹奏楽)やオーケストラなどの演奏活動が盛んです。しかし、とりわけ地方の学校では楽器のメンテナンスについて学ぶ機会が少ないため、せっかく良い楽器を保有しても楽器が傷み、上手く音が出ないケースがあります。
ヤマハ・ミュージック・コリアでは、こうした学校での演奏環境づくりを支援するため、2013年よりオーケストラのある学校へ訪問し、楽器のメンテナンスセミナーや無償修理を行う活動をしています。これまでに300校以上の学校を訪問し、子どもたちにメンテナンスをしっかりと行い楽器を大切にすることの重要性を伝えることで、学校での音楽活動支援と韓国の音楽文化発展に寄与しています。

メンテナンスセミナー
楽器メンテナンス

全国の高校軽音部を楽器・機材面でサポートする「K-ONB」

ヤマハミュージックジャパンは、全国で盛んになりつつある高校の軽音楽部を、楽器メーカーとしてサポートするため「K-ONB(ケイオンブ)」を立ち上げ、楽器や機材面でサポートしています。
部員数が急激に増え、楽器や機材についての十分な知識がなく機材の使い方に悩んでいる学校が数多くあり、楽器のメンテナンスの方法がわからず困っている生徒も多いです。そうした軽音楽部の活動をサポートすべく、年間200以上の高校や大会現場に直接訪問して「楽器の技術講習会」や「バンド演奏へのアドバイス」を行ったり、「部室の機材を使いこなす講習会」を開くなど、積極的に活動しています。また、各種SNSやYouTubeなどに、楽器や機材の知識を中心とした高校軽音で役立つコンテンツを投稿。リアル・WEBの両面でサポートしています。

高校の軽音楽部を訪問し、楽器・機材の扱いやバンド演奏についてアドバイス

農民工学校への楽器寄贈

ヤマハ楽器音響(中国)では、中国における事業の発展と地域への感謝をこめて、2012年度から中国の製造現地法人4社や主要特約店とともに中国各地の農民工学校などに楽器を寄贈しています。
多くの子どもたちに楽器に触れる機会を提供し、音楽や楽器の素晴らしさを伝え、豊かな感性を育んでもらうことを目的に継続しています。これまでの累計寄贈校は60校に達し、合計寄贈相当額は520万元となりました。

主な楽器寄贈実績
日程 対象校数 寄贈内容
2013年3月期 2校 ピアノ、ポータブルキーボード、AV製品の寄贈
2014年3月期 27校 ピアノ、電子ピアノ、ポータブルキーボード、AV製品の寄贈
2015年3月期 7校 ピアノ、ポータブルキーボード、AV製品の寄贈
2016年3月期 7校 ピアノ、ポータブルキーボード、AV製品、PA機器の寄贈
2017年3月期 5校 電子キーボードの寄贈
2018年3月期 2校 電子キーボードの寄贈
2019年3月期 5校 電子キーボードの寄贈
2020年3月期 5校 電子キーボードの寄贈
2021年3月期 - 新型コロナウイルス感染症のため延期
2022年3月期 - 新型コロナウイルス感染症のため延期
楽器贈呈式
寄贈したポータブルキーボード

音楽指導者支援サイト

ヤマハ(株)は、学校の音楽教師をはじめピアノやエレクトーン指導者など、音楽指導者をサポートするしくみを整備しています。音楽の歴史や楽典、さまざまな楽器について、音楽の授業に役立つ情報がたくさん詰まった学校音楽教育支援サイト「Music pal」を開設しているほか、「楽器解体全書」サイトでは、各楽器の成り立ちや仕組み、弾き方、豆知識などを掲載し、興味のある楽器についてより知識を深め、音楽の授業や調べ学習にも役立つ内容を掲載しています。

日本吹奏楽指導者クリニック

(株)ヤマハミュージックジャパンは、全国の吹奏楽団体の指導者を対象とした講座やコンサートを実施する国内最大規模の総合研修会「日本吹奏楽指導者クリニック」に共催し、企画運営に携わっています。これは、日本における吹奏楽指導の質の向上や、吹奏楽文化の普及と発展を目的とした国内最大規模の総合研修会で、学校の音楽科教諭をはじめとする、すべての吹奏楽指導者を対象として1970年にスタートしたものです。国内外から著名な講師やバンドをゲストに招聘し、指導法や運営法などに関する講座やコンサートを開催するほか、新しい楽譜やソフトなど時代のニーズに合った情報を提供しながら、これからの吹奏楽活動のあり方や方向性を提案。日本の吹奏楽文化の向上に貢献しています。

「第50回日本吹奏楽指導者クリニック」のコンサート

ヤマハグループでは、国内外の各地域で、イベントやコンテストの開催を通じた音楽普及活動に取り組んでいます。楽器・音楽を楽しむ幅広い層の方々に音楽の楽しみ方を提案したり、ステップアップを目指すアマチュアミュージシャンへ発表の場を企画・提供しています。

ハママツ・ジャズ・ウィークの開催

ヤマハ(株)は、浜松市などと共催で、毎年「ハママツ・ジャズ・ウィーク」を開催しています。浜松市が推進する音楽を中核にした都市づくり「音楽のまちづくり」事業の一つとして1992年にスタートして以来、世代を問わず楽しめる「ジャズ」をテーマに官民一体となって企画運営するユニークな地域文化イベントとして、ジャズファンだけでなく多くの方々に親しまれています。国内外の超一流アーティストが登場するホールコンサート、街角で気軽にジャズを楽しるストリートライブや地域のジャズクラブと連携してのイベントなどに加えて、近年は、他自治体や文化事業団体との交流、観光産業各所との連携やオンラインライブ配信により県内外へ浜松・ジャズの魅力を発信するなど、音楽ファンの拡大と音楽文化の普及に貢献する新たな試みにも取り組んでいます。また、全国の優秀な学生ビッグバンドが集結する祭典や、小学生から大学生のビッグバンドを対象としたワークショップの開催、浜松市内の小・中学校にプロ演奏者が出向く「出前ジャズコンサート」など、子どもたちの感性と表現力を育むことを目的とした次世代育成企画なども展開しています。

「ヤマハ ジャズ フェスティバル」
学生ビッグバンドワークショップ「ネクストジェネレーションジャズステージ

みんなで楽しむ大合奏「ブラス・ジャンボリー」

ヤマハグループは“演奏する楽しみ”を原点に、管打楽器の愛好者が大きな会場で一堂に会して合奏を楽しむコンサートイベント「ブラス・ジャンボリー」を開催しています。気軽に演奏を楽しみたい人々に演奏の場を提供し、かつての楽器経験者や楽器を始めたばかりの初心者、親子やファミリー、仲間同士での参加など、すべての管打楽器の愛好者を対象に「みんなで楽しむ音楽の一日」を目指して取り組んでいます。11回目の開催となった2022年は、リハーサル前に指揮・合奏指導で出演の織田浩司さんによる特別講座「織田さんと楽しもう!吹奏楽ポップス!~ポップスを10倍楽しめるコツ~」も開講。コンサートでは、10代から70代の約200名の多世代の参加者が、奏でる喜び、音楽を通した出会いと交流、大合奏の醍醐味を堪能し、それぞれの想いが詰まったスペシャルな大演奏会を会場一体で創り上げました。

指揮・合奏指導の織田浩司さんと、スペシャルゲストのチューバマンショー 
10代から70代までの約200名の管打楽器愛好者が参加

ヤマハサクソフォンソロコンテスト

ヤマハ楽器音響(中国)では、管楽器演奏を発表する機会の提供として、毎年管楽器演奏コンテストを各地で開催しています。2021年はサクソフォンコンテストを開催、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、全てオンラインに切り替えて実施し、468名が参加しました。

オンラインでの審査
演奏の様子
サクソフォンソロコンテストのチラシ

ピアノをもっと身近に -誰でも自由に弾けるLovePiano®を展開中-

(株)ヤマハミュージックジャパンでは、2017年から、もっとピアノを身近に感じて、楽しんでいただくための活動「LovePiano」を進めています。これは「LovePiano」をテーマにペイントされたピアノを駅や空港、商業施設などのオープンスペースに設置いただき、誰でも自由に弾けるピアノとして多くの方に親しんでいただくためのプロジェクトです。これまで、全国90カ所以上で設置され、気軽に演奏できる機会を提供するとともに、場の賑わいやピアノを通じて人と人がつながる空間を創出しました。
2022年3月期にはヤマハ楽器音響(中国)でも開始しました。2022年2月、南京市のショッピングモールに上海芸術学院の学生がデザインをしたペイントピアノ4台をオープンスペースに設置したほか、ピアノ演奏ができない方も気軽に参加できる取り組みとして、自分の好きなピアノのデザインをオンライン上に投稿できるピアノ塗り絵イベントも行いました。
今後もこの「LovePiano」を通じて、ピアノを始める方や再開される方が増えることを願うとともに、地域の活性やコミュニティーの推進などの社会課題解決に取り組んでいきます。

    <国内の主な設置事例(2021年)>
  • 上田鉄道 別所温泉駅(上田電鉄株式会社)
  • 道の駅「鄙の里」(南房総市観光協会)
  • 日比谷OKUROJI(株式会社ジェイアール東日本都市開発)
  • ステラタウン(さいたま市文化振興課)
  • 28thキネコ国際映画祭
  • あまぎ水の文化村(独立行政法人水資源機構) 他
28thキネコ国際映画祭_玉川高島屋SC
28thキネコ国際映画祭_二子玉川ライズ
あまぎ水の文化村
道の駅_鄙の里
中国_南京市ショッピングモール
中国_南京市ショッピングモール

浜松市楽器博物館との共同展示「Real Sound Viewing 筑前琵琶演奏再現」を開催

2021年10月28日から12月7日まで、ヤマハと浜松市楽器博物館は、共同展示「Real Sound Viewing 筑前琵琶演奏再現」を開催しました。
これは、当社が“ライブの真空パック”をコンセプトに、アーティストの演奏を保存し再現するシステム「Real Sound Viewing(リアルサウンドビューイング)」を用いた展示です。奏者が演奏した音をデジタル化し、そのデータを細かい振動へと変換する装置を琵琶に取り付けて実際に楽器を振動させることで、琵琶の自動演奏を実現しました。力強い響きから繊細な余韻まで忠実に再現した楽器の「生の音」による演奏音と、奏者のリアルな等身大映像を組み合わせることで、あたかも目の前で実際に演奏が行われているかのような臨場感あふれるバーチャルステージを体感いただきました。
さらに、筑前琵琶への理解を深めていただくため、上映中の演目の語りの譜面をモニターに表示して、物語の盛り上がりとともに演奏が力強くなる様子が視覚的にも感じられる展示も行いました。これにより初めて見る人にも、「物語に合わせて演奏する」という特徴を持つ筑前琵琶の世界をより深く体験していただきました。
今後もヤマハは、有形の文化財としての楽器だけでなく、奏でられる音楽そのものも後世に伝え残していくことを目指していきます。