バリューチェーンにおける社会的責任の推進

推進体制と取り組み

ヤマハグループは、製品・サービスの開発、原材料調達、製造、販売、リサイクルなどバリューチェーン全体でのサステナビリティ推進に取り組んでいます。代表執行役社長を委員長とするサステナビリティ委員会の下部組織に、執行役を部会長とする「調達部会」「人権・DE&I部会」を設置し、サプライチェーンにおける環境や人権などのサステナビリティ課題に対応するための社内体制を整備し、施策や目標・実行計画の策定、関連部門と連携した推進活動、モニタリングを行っています。

サプライチェーンにおけるサステナビリティ推進

ヤマハのサプライチェーン

ヤマハグループで製造・販売している楽器や音響機器をはじめとしたさまざまな製品およびその部品は、主に、日本、中国、インドネシア、マレーシア、インドに拠点を構えるヤマハのグループ企業で生産・組み立てされています(一部、製造委託あり)。また、世界中のサプライヤーから原材料や部品などを調達しています。

[図] ヤマハのサプライチェーンのイメージ

ヤマハのサプライチェーンのイメージ

ヤマハの生産拠点と主な生産品目

[図] ヤマハの生産拠点と主な生産品目

※2026年3月末時点

自社グループ製造事業所に対する取り組み

生産拠点のグループ企業に対し、ヤマハ(株)の専門スタッフが、グループ規程や基準に基づいて労務、安全衛生、環境管理の状況をモニターし、仕組み構築支援や改善アドバイスを行っています。

調達先に対する取り組み

原材料や部品の調達にあたっては、調達に関するヤマハグループの各方針に従い、「ヤマハグループ購買方針」に定める基準に沿った調達先の選定や、環境や社会に配慮した責任ある調達を行っています。

なお、ヤマハ(株)は電子情報技術産業協会(JEITA)の調達委員会などに参加し、業界連携でのCSR調達推進に努めています。

ヤマハサプライヤーCSR行動基準への順守要請

労働や人権、環境などサステナビリティについて定めた「ヤマハサプライヤーCSR行動基準」への順守を、取引基本契約書や同意確認書の取り交わしにより調達先に要請しています。原材料・部品の調達先、サービス・販売会社における販売用の仕入れ品やヤマハ自らが使用・消費する物品の調達先に同基準の順守要請を進め、約4,500社から順守同意を得ています。2025年11月には、人権尊重や環境保全に対する社会からの要請の高まりに鑑みた行動基準改定を行い、採用手数料の従業員負担禁止などの具体的事項の明記、責任ある鉱物調達における対象拡大、GHG削減目標設定など要請事項の強化を図りました。

サプライヤーへのサステナビリティに関する要請事項

区分 要請事項
労働・人権 強制労働の禁止
児童労働の禁止
適切な労働時間
適切な賃金と給付
非人道的な扱いの禁止
差別の禁止
労働者の権利の確保(結社の自由や団体交渉権など)
責任ある鉱物調達
労働安全 職務上の安全確保
事故の未然防止と緊急時への備え
労働災害と疾病の予防
身体的負荷、疾病への配慮
機械装置の安全対策
施設の安全衛生の確保
環境保全 環境許可証などの順守
気候変動対策
省資源と適正な廃棄物処分
水の管理
生物多様性の保全
化学物質の管理・汚染防止
倫理 汚職・賄賂などの禁止
反競争的行為の禁止
利益相反行為の禁止
情報の開示
製品情報の適切な提供、責任ある広告・マーケティング
不正行為の予防と早期発見
知的財産権の保護
個人情報の保護
  • 上記に加え、木材サプライヤーに向けては、持続可能な木材資源の調達を要請
[図] ヤマハサプライヤーCSR行動基準

ヤマハサプライヤーCSR行動基準

サプライヤーアセスメント

ヤマハサプライヤーCSR行動基準の順守要請に加え、製品の原材料・部品の調達先を中心に、書類や訪問による監査を取引開始時および定期的に実施しています。中期経営計画「Rebuild&Evolve」では経営目標としてサプライヤー実地監査60社を掲げています。

2026年3月期は、取引開始の検討に際し59社に書類監査(SAQ)を実施しました。また、既存の取引先に対する一斉SAQを3年ごとに実施しており、直近では2,053社から回答を得ました(回答率90.9%)。SAQを実施した調達先の所在国は日本が36%、中国が33%、インドネシアが約11%、マレーシアが4.7%です。その他にシンガポールやインドなどがあります。2026年3月期にはSAQ調査票を大幅に見直し、行動基準の改定事項の反映に加え、取り組み状況を具体的に確認する設問の追加などリスク抽出機能の向上を図りました。サプライヤー各社のSAQ回答を確認、評価結果や推奨事項をフィードバックするとともに、早急に対応いただきたい項目があるサプライヤーに対しては、是正計画や実施状況の確認を順次進めています。また、2025年3月期のマレーシアのサプライヤーにおける移民労働者への人権侵害通報を受け、同国の労働人権リスクの高さを考慮し、マレーシア国内のサプライヤー58社に対する追加的な書類調査を実施、リスクが確認された42社に対し是正を要請しました。

さらには、所在地や当社との取引状況、SAQ結果などに鑑みて抽出した調達先に対し、訪問による監査を2023年12月より実施しています。これまでに日本18社、中国22社、インドネシア9社、マレーシア10社、インド1社の調達先に外部専門機関による実地監査を行い、指摘事項への対応を要請しています。

監査に応じていただけない、もしくは改善に前向きでない調達先については、開示情報や所在地などからのリスク確認と今後の取引関係の見直しを進めています。

【アセスメントでの主な不適合項目】

書類監査(SAQ)

安全衛生教育の未実施、母国語以外の言語での雇用契約、採用手数料の労働者負担、環境関連規制の確認不足、請負業者の労働災害の確認不足

マレーシア追加書類監査

パスポートなど身分証の預かり、寮の一人当たりスペース不足、給与控除に関する説明不足

実地監査

パスポートなど身分証の預かり、操業許可証の期限切れ、雇用契約書・勤怠記録・給与明細の不備、法定賃金・労働時間の不順守、施設や寮の避難経路や防災設備の不備、危険物や化学物質の不適切な保管、苦情処理の仕組み未整備

[図] リスクに応じた調達先の管理

リスクに応じた調達先の管理

[図] サプライヤーアセスメントの対象(2026年3月末現在)

サプライヤーアセスメントの対象(2026年3月末現在)

[図] サプライヤーアセスメントの進め方

サプライヤーアセスメントの進め方

[図] 調査票(ヤマハサプライヤーCSR自己点検表)

調査票(ヤマハサプライヤーCSR自己点検表)

サプライチェーン上の人権侵害の苦情・通報への対応

ヤマハグループでは、サプライチェーン上の人権侵害に関する通報・相談を積極的に受け付けています。2022年10月には一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に加盟し、同機構が運営する対話救済プラットフォームによる苦情を受け付けています。2026年3月末時点で4件(うちJaCER経由2件)の通報が寄せられ、対応を進めました。今後も受付を継続するとともに、窓口の周知に努めていきます。

通報事案リスト(2026年3月末時点)

通報時期 通報者 受付窓口 国・地域 通報内容 対応
2024年4月 ライツホルダーの代理人 JaCER マレーシア サプライヤーにおいて、移民労働者の強制労働に該当する人権侵害(労働者自身による手数料負担、寮環境の不備ほか)が発生している 事実確認された事項の是正と被害者救済を要請し、労働者への手数料返金や寮環境の改善などが実施された
2024年8月 ライツホルダーの代理人 JaCER マレーシア サプライヤーにおいて、移民労働者の強制労働に該当する人権侵害(労働者自身による手数料負担、パスポート預かりほか)が発生している 事実確認された事項の是正と被害者救済を要請し、パスポート返却や手数料返金などが実施された
2025年3月 ライツホルダーの代理人 Eメール マレーシア サプライヤーにおいて深刻な労災が発生。また、移民労働者の強制労働に該当する人権侵害(労働者自身による手数料負担、パスポート預かりほか)が発生している 労災被害への補償、原因究明および再発防止措置がなされたことを確認。手数料返金が既に実施済であること、パスポートの預かりがないことを確認
2026年3月 ライツホルダーの代理人 Eメール マレーシア サプライヤーにおいて、移民労働者の強制労働に該当する人権侵害(労働者自身による手数料負担、パスポート預かりほか)が発生している 事実確認された事項の是正と被害者救済を要請し、手数料返金プロセスなどが進行中。パスポート返却は完了

教育・啓発

環境や社会への影響に配慮した責任ある調達活動のための教育・啓発に取り組んでいます。取適法や契約に関する法律、貿易や調達物品に関する諸規制など公正な取引のための教育はもとより、サプライチェーンにおける人権や環境への悪影響を防止・低減するための教育を行っています。2026年3月期には「調達CSR研修」として、国内外グループ会社の調達関連部門500名がEラーニングを受講、実務担当者など220名が実践的内容であるセミナーを受講しました。木材の調達担当者に対しては、毎年木材の合法性確認など持続可能な木材調達についての説明会を行っています。また、広く一般従業員に向けて、イントラネット上で「ビジネスと人権」テーマのEラーニングを実施。1,000名以上がサプライチェーン上の人権・環境リスクや法規制動向について学びました。

一方、調達先に対しては「ヤマハサプライヤーCSR行動基準」の順守要請やSAQを通じて、環境や社会への配慮を呼び掛けています。2025年3月期には日本国内の調達先企業に向けて、外部有識者を招いて「ビジネスと人権への対応」と題した労働人権に関するセミナーを開催しました。今後は海外の調達先も含め、責任ある調達に関する専門的内容のEラーニングなどを展開していく計画です。

責任ある原材料調達

天然資源など各種原材料の調達においては、環境や社会に与える影響に配慮し、責任ある調達を行うことが大切です。ヤマハグループでは、楽器をはじめとする製品の原材料として重要な「木材」の持続可能な調達や、グリーン調達などのテーマに取り組んでいます。

責任ある鉱物調達

ヤマハグループは、人権侵害や環境破壊に加担しない鉱物調達を目指しています。顧客からのデューディリジェンス要請に応えるとともに「ヤマハサプライヤーCSR行動基準」においてサプライヤーに対しても同様の取り組みを求めています。2026年3月期には方針を改定し、スズ、タンタル、タングステン、金の4鉱物以外も含む鉱物全般に対象を広げ、調達先の協力を得ながら、Responsible Minerals Initiative(RMI)のテンプレート(CMRTおよびEMRT)による調査を実施、回答結果の集計・分析を行っています。

取引先とのコミュニケーション

ヤマハグループでは、取引先や委託先とのコミュニケーションを推進しています。日本国内では、原材料・部品・設備などの調達先、物流業務・工事などの委託先に対し、経営や生産・販売動向に関する情報共有、労働安全や環境保全などの協力を行うほか、懇親活動を通じて意見交換などしやすい雰囲気の醸成に努めています。また、日本国内生産拠点の廃棄物処理委託先について、法令順守やCSR面での確認や訪問による現地確認を行っています。なお、国内生産拠点を置く静岡県の産業廃棄物協会に排出事業者として加盟し、廃棄物処理に関する情報交換や、施設見学会などのイベント協力を通じたコミュニケーションを図っています。

パートナーシップ構築宣言

[ロゴ] パートナーシップ構築宣言

ヤマハ(株)は、経団連会長、日商会頭、連合会長および関係大臣(内閣府、経産省、厚労省、農水省、国交省)をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の趣旨に賛同し、サプライチェーン全体での付加価値向上を目指し取引先との共存共栄関係の構築に取り組むことを表明する「パートナーシップ構築宣言」を公表しています。

パートナーシップ構築宣言(2021年1月1日登録)

「ホワイト物流」推進運動

ヤマハ(株)は、国土交通省・経済産業省・農林水産省が提唱する「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同し、生産性の高い物流と働き方改革の実現に向け、取引先や物流事業者等の関係者との相互理解と協力のもとで物流の改善に取り組むことを方針とした「持続可能な物流の実現に向けた自主行動宣言」を提出しています。