大正琴&ヴィオリラの成り立ち
大正琴&ヴィオリラ誕生ストーリー

大正琴は1912年、大正元年に、名古屋市に住んでいた森田吾郎(1874~1952)が発明したといわれています。彼は明笛(みんてき)という笛の名手で、1897年ごろ、明笛を手に海外へ演奏旅行に出かけました。アメリカやヨーロッパに渡ってさまざまな西洋楽器と出会い、おおいに刺激を受けたようで、帰国後、当時流行していた二弦琴(にげんきん)に、西洋音階のフレットと、タイプライターにヒントを得た音階ボタンを取り付けました。それが大正琴の始まりです。

大正琴というと和楽器のようですが、正確には日本で生まれた洋楽器と言えます。まず、大正琴の弦の素材は、日本古来の楽器は絹糸なのに対して金属弦です。また、鍵盤も付いています。鍵盤で、西洋音階(1オクターブが12音の配列から成る音階)の音を出す構造になっているのです。
ちなみにヨーロッパには似た楽器として、「ハーディガーディ」があります。リュート型またはギター型の胴体に、弦を擦る円盤と音程を変える鍵盤装置が付いた構造です。
西洋の音楽が演奏でき、ピアノやバイオリンよりも安価で親しみやすい楽器として、大正から昭和初期にかけて、そして戦後にも何度かブームとなり、女性を中心に愛好家が増えました。澄んだ響きをもち、童謡や演歌、ポピュラーミュージックなど多彩なジャンルの音楽が楽しめます。

大正琴によく似た見かけをもつ、ヴィオリラという楽器があります。これは21世紀に入ってからヤマハで開発されました。ヴィオリラは大正琴と構造も違いますが、それ以上に奏法のバリエーションの豊かさが違います。弓でひいたり、ピックでかき鳴らしたり、さらにはスティックなどで弦を打ったりすることもできるのです。
弦を弓で擦って音を出す弦楽器のことを擦弦楽器(さつげんがっき)といいます。中世から18世紀にかけて、擦弦楽器のことを「ヴィオール(Viol)族」と呼んでいました。バイオリンや二胡(にこ)もこの仲間で、弦をこすり続けることで音が鳴り続ける持続音を出します。
一方、弦をはじいて音を出す弦楽器のことを撥弦楽器(はつげんがっき)といいます。琴、ギター、ウッドベースなどが代表的な撥弦楽器です。古代ギリシャでは竪琴のことを「リラ」または「ライヤー」と呼んでいました。いずれもLyreと表記します。弦をはじいた瞬間は大きくて、その後どんどん小さくなる減衰音を出します。
ヴィオリラ(Violyre)という名前は、弦を擦るヴィオールと弦をはじくリラを合体した造語で、擦ることもはじくことも、どちらも楽しめる一台ということから付けられました。世界中のさまざまな弦楽器の楽しみを一台で手軽に体感できるのがヴィオリラの特長です。