SCHOOL PROJECT

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多くの子どもたちに楽器演奏の機会を
提供し、音楽・楽器の楽しさを伝える。
ヤマハのビジネスには、
世界の教育を変えるチカラがある――

スクールプロジェクト

日本では当たり前となっている音楽教育。しかし、世界には楽器や指導者不足、指導カリキュラムの未整備を理由に、音楽・楽器に触れる機会に恵まれない子どもたちが多く存在している。2015年にスタートしたヤマハの音楽教育普及活動「スクールプロジェクト」には、どのような意味があるのか。その活動は何を目的としているのか。そこには、これからのビジネスの「あるべき姿」がある。

Project Member

日比野 ともみ

AP営業統括部 音楽普及グループ
2008年入社/経済学部卒

音楽の力で、世界の子どもたちに、未来への架け橋を。

原点は、津田梅子の伝記。

新興国の小学校に向けて、政府教育機関と協業しながら「楽器・教材・指導ノウハウ」をパッケージにした独自プログラムを提供し、非認知能力の向上に寄与する――。スクールプロジェクトを牽引する日比野ともみの原点。それは、幼いころの愛読書だった。
「日本初の女性留学生であり、教育者として名を馳せた津田梅子さん。物心ついたころから、彼女の伝記に夢中になっていました。大学時代にドイツに留学したことも、グローバルなビジネスに携わりたいと思ったことも、その影響が大きいのだと思います。今、グローバルな音楽教育の普及に携わっていることも、何かの縁なのかもしれませんね」
たとえ、勉強が苦手でも、スポーツでみんなの人気者になる。ピアノを上手に弾いて、注目を集める。日本ではそんな光景が当たり前だが、世界のあらゆる国に、同じ環境があるとは言えない。
「子どもたちが輝く場所を増やす。その大切さを教えてくれたのは、ヨルダンの子どもたちでした。ヤマハの海外協力休職制度を利用して、JICA海外協力隊として、難民キャンプ内の小学校で音楽教師をすることになったのですが、そのときに学んだ言語や、経験、そして子どもたちの笑顔が、今のプロジェクトに大きく活かされているんです」

ヤマハの海外協力休職制度…
事前の承認を受けることで、JICA海外協力隊への参加支援する制度。休職期間は1~2年4カ月程度。

子どもたちの未来を担うため、自らの責任を全うする。

現在、スクールプロジェクトは、エジプト・アラブ首長国連邦・ブラジル・インドネシア・マレーシア・インド・ベトナムの7か国で推進中だ。各国の行政機関や大使館との調整・交渉業務から、音楽教育を担う講師の研修、教材の開発、地道な運営業務まで。5名のプロジェクトメンバーたちは、現地で実務を担う販売子会社のメンバーと共に広範にわたる業務を担っている。
「最大の難関は、このチームに異動してすぐのタイミングで訪れました。英語で書かれた非認知能力育成を重視し日本式音楽教育を取り入れて新たに開発された1年分の教材を渡されて、『3か月後に、これをエジプトの現地教員にアラビア語で教えてください』と言うんです。数日前まで国内の顧客リサーチをしていた私が、ですよ(笑)」
困難なミッションを前にして、日比野は重いプレッシャーを感じることになる。その重責に応えるためには、ひたすら勉強と試行錯誤を繰り返すしかなかった。
「自らのレクチャーが、子どもたちの授業をつくる。決して中途半端は許されないと自分に言い聞かせました。非認知能力を重視した教育の本質をいかに伝えるのか。日本の教育やヤマハ音楽教室の歴史を学びながら、教材の意図や背景を理解する……。とにかく必死で向き合い続けましたね」

これは、ヤマハのソリューションビジネスだ。

スクールプロジェクトは、単なる慈善活動ではない。音楽器楽教育の機会を提供し、その国に新たな市場を創出する。言うならば、「善の収益化」を図る活動だ。だからこそ、プロジェクトメンバーたちは「価値」にこだわり続ける。
「私たちが提供した音楽教育プログラムで、子どもたちにどのような成長が見られたか。その価値を定量的なデータと、定性的なファクトで示していきます。ボランティア活動であれば、『音楽を楽しんでくれた』『笑顔を見られてよかった』でいいのですが、私たちはビジネスとして、このプロジェクトを推進しているわけです。確かな価値を提供できなければ、その国にとっても資金を投じるメリットがなくなってしまいます」
ESGの高まりによって、企業の責任はますます広範な分野に及んでいる。しかし、「社会貢献」をビジネスと別のものとして捉えたままでは、サステナブルな社会はいつまで経っても実現しない。大切なのは、利益追求と社会貢献を同期化すること。スクールプロジェクトは、これからのビジネスの「あるべき姿」を象徴するものだ。
「スクールプロジェクトは、ヤマハが手がけるソリューションビジネスなんです。ヤマハの楽器や、音楽に対する知見を活用して、その国の教育を充実させる。そして、その国の発展を支える人材が育まれてゆく……。私たちのものづくりには、それだけの価値があるんです」

その「環」は、数多の人生を輝かせる。

新興国に音楽教育の機会を提供する。そして、そこに新たな市場が生まれる。得られた利益がさらなる活動の充実につながっていく。スクールプロジェクトが生み出す理想的な「環」は、社会とヤマハがともに成長していくためのポテンシャルを秘めている。そして、音楽教育の場で生まれる「感動」の数々は、やがて、子どもたちの人生をより豊かに、輝かせることだろう。
「小学生のときの文集を見返してみると、そこには『音楽を通じて、世界の架け橋になりたい』と書いてありました。その一助となれる仕事ができていることは、何よりの喜びです。子どもたちの未来を担っていく責任を忘れることなく、このプロジェクトをさらに発展させていきたいですね」