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読売新聞│配信日:2019年8月26日│配信テーマ:洋楽  

「ムカつく」で連帯感 新作携えフジロック出演 ケミカル・ブラザーズ 


 英国エレクトロニックミュージックの雄、ケミカル・ブラザーズが新作アルバム「ノー・ジオグラフィー」(ユニバーサル)を携え、7月のフジロック・フェスティバル(新潟・苗場スキー場)に出演した。凝った映像や照明を駆使したショーを展開。新作収録曲も披露した。メンバーのトム・ローランズに心境を聞いた。(桜井学)
 ケミカルはトムとエド・サイモンズの2人組。1995年の初アルバムが全英チャートトップ10入りし、その後多くの作品が全英1位を獲得している。
 新作も奇抜な電子音が飛び交い実験的だが、踊れるサウンドで彼ららしい仕上がり。制作に入った後も公演を行っていたため、「ライブとのつながりを強く持った作品になったと思う」。ステージの熱狂がレコーディングにも反映したようだ。
 スタジオでの即興のセッションがもとになったという「グラヴィティ・ドロップス」など、硬質で攻撃的な響きの曲が並ぶ。「あくまでポジティブな作品にしたかった。ニヒルな音楽じゃない。ネガティブな攻撃性には興味がないんだよ」
 冒頭の「イヴ・オブ・デストラクション」では「破壊の前夜」という言葉が繰り返され、「ぶっ壊したい何もかも」という日本語が挿入されている。その一方で、かつてディスコでヒットした曲から「たぶん 友達を見つける 週末を一緒に過ごすために」というフレーズをサンプリング(引用)している。「週末が来て友達と出会って、心配事や破壊的な気持ちが吹っ飛んで解放される、という感じの曲なんだ」
 怒りや悲しみを乗り越えて人々とつながりたい。そんな気持ちがアルバム全体に表れている。奇麗事を並べるばかりでは現実味がないから激しい言葉も使う。「MAH」では「最高にムカついた 我慢ならない」と繰り返す。多くの英国民が反対の声をあげているブレグジット(英国のEU離脱)などの社会変化に対する思いが背景にあるという。「この曲をやるのはエキサイティング。皆のフィーリングが一つになるんだ。ムカついている人はたくさんいるから」
 フジロック会場では、彼らの狙いが明確に伝わってきた。激しいビートに合わせ、人々は我を忘れて踊る。その場には彼らの音楽への共鳴と、連帯感が生まれていた。

読売新聞2019年8月 8日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:桜井学

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