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読売新聞│配信日:2019年8月26日│配信テーマ:その他  

[イマ推しっ!] わたせせいぞう&島田歌穂(前編)


 ◆イラストと歌 幸福な相乗効果
 漫画家でイラストレーターのわたせせいぞうさんと、女優で歌手の島田歌穂さん。ジャンルは違えど2人は30年来の親交があり、共に今年、活動45年の節目を迎えた。わたせさんが、島田さんの新アルバム「Slow Ballade—おとこごころ—」のジャケットを手がけた縁もあり、そろってインタビューに答えてくれた。2週連続でお届けする。(清川仁)
 満月が照らす海越しの夜景と、それを見つめる男の背中。ジャケットイラストは、わたせさんが島田さんのイメージを事細かに聞き出して、具現化していった。島田さんは「携帯電話のタイプから洋服の材質にいたるまで尋ねられ、1枚の中にドラマを込めて描かれていることに気付かされた。お芝居の作り方と共通しているんだなあって」と感心する。
 同アルバムでは、「いっそセレナーデ」(井上陽水)、「月」(桑田佳祐)など、男性歌手の名曲をカバー。島田さんは、哀愁を帯びた男心をドラマチックに歌い上げる。「寂しげな男の背中を描いてと、ずっと言っていたね」と、わたせさん。
 なんと島田さんは、同様に男性の背中が描かれたレコードを持参してくれた。作曲家でピアニストの夫、島健さんが手がけた1987年のアルバム「ハートカクテル Vol.4」。わたせさんの大ヒット漫画を原作としたアニメーション番組のサウンドトラックだ。米国で一流ジャズ奏者と共演してきた島さんが帰国し、作曲家として世に出る契機となった作品で、「島健が大切にしまっておいたものなんです」と島田さん。「僕の作品でイメージを広げて曲を作ってくれるなんて贅沢(ぜいたく)で幸せでした。逆に今、島さんの曲を聴きながら別の物語が浮かんでくる」と、わたせさんは幸福な相乗効果を語る。
 87年は島田さんにとっても、ミュージカル「レ・ミゼラブル」で脚光を浴びた記念すべき年であり、わたせさんもハートカクテル(83〜89年「週刊モーニング」で連載)で乗りに乗っていた頃。「みんな心に夢を抱けた時代だったね。企業メセナも盛んだった」と、わたせさん。「85年にレミゼという衝撃的な作品がイギリスで生まれ、日本で上演出来たことも象徴的。資生堂の冠公演だったし」と、島田さんも当時を懐かしむ。
 「自分はレミゼをきっかけに、女優としてどこまで深くドラマを伝えられるか挑戦してきた。今回のアルバムでは名曲の力をお借りしつつ、島田歌穂が歌うとこういうふうになるんだ、という化学反応も楽しんでいただきたい」と語る。それを受け、わたせさんは「僕も原作ありの絵を描く時に、その通りだとつまんない。原作の文章を触媒にして自分でイメージを広げて、ひょっとしたら作者に違うよって言われてもいいかなって。そういう楽しみがありますよね」と、ほほ笑んだ。
 島田さんのアルバムは9月18日発売。ほかに、山下達郎、小田和正、玉置浩二、槇原敬之、秦基博などをカバー。編曲は島さん。
 きょう21日、「わたせせいぞう展」が横浜高島屋で開幕。26日まで。24日にはサイン会も。(電)03・5429・7701(アップルファーム)。
          ◇
 ※次週28日の後編では、わたせさんの新刊3冊と、島田さんのアルバムのプレゼント企画を掲載(サイン入り)。

読売新聞2019年8月21日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:清川仁

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