[ 画像 ] 今週の音楽記事から 音楽ジャーナリストの眼 毎週月曜更新

新聞記事

毎日新聞│配信日:2019年6月17日│配信テーマ:Jポップ  

<Interview>伊藤蘭 今、「普通」になれたから 41年後のソロデビュー


 「普通の女の子に戻りたい!」。1977年夏、こう絶叫した後、「ピンク・レディー」と並ぶ70年代のアイドルグループ「キャンディーズ」は、78年4月4日、東京・後楽園球場に5万5000人のファンを集めて解散コンサートを開き、4年半の活動にピリオドを打った。伊藤蘭、藤村美樹、田中好子の3人は、そこで新たなスタートを切った。あれから41年、藤村は家庭に入り、女優として活躍していた田中は、2011年、乳がんで亡くなった。伊藤も一人芸能界で女優を続けていた。が、5月29日、伊藤はアルバム「マイ・ブーケ」(ソニー)でソロ歌手デビューを果たしたのだ。

    ■   ■

 「歌を出さないかという申し出は何度もあった。ずーっと言葉を濁していたけど、最近『あ、遠慮しがちな年齢になってきたな』と感じ始めていた。ならば、今こそ『やる気』の方に手を伸ばそう、って決断したの」と、64歳でのデビューのきっかけを語る。

 「キャンディーズ時代は青春第1章。今思うと、違う生き物ね」と笑い「役者になったころは青春第2章。まだ見ぬ自分を探す、って感じ。第1章に戻った気はしません。別の旅路に出た感じかな」という新たな感覚を明らかにする。どのような旅路なのか。「役者として、一曲一曲の主人公の女性像と歌う歌手像を演じるスタンス。私の持ち物も増えたし」。キャリアを重ね、歌への向き合い方もアイドル時代とは異なる。

 もちろん「41年の空白は大きな壁だった。挑戦そのもの。昔からですけどね」とほほ笑みながら「アイドル時代はいつの間にか製品ができてた。今度は、曲選びから一つ一つ作業に関われて『音楽はこうやって作るんだ』と新鮮な喜びを味わえた」と手応えを語る。アルバムのために新曲を110曲集めたという。阿木燿子・宇崎竜童コンビや懐かしい門あさ美、トータス松本、井上陽水らヒットメーカーの曲のほか自身の作詞も3曲収めた。

 「気を張らずゆるーい感じで制作を進めました。芝居より早く別世界に連れて行ってくれる歌の力に感心しきりでした。夢、希望、ロマン、いろんな心の旅に誘ってくれる。家族でそんな話をしました」。家族とは、夫の水谷豊、長女の趣里のこと。水谷は「泉のようなアイデア」を提供してくれたと言う。

    ■   ■

 アルバムは、昔からのファンにはきっと“ランちゃん”が歌っているように聞こえるだろう。わざとキャリアを演出することはない。ただ若いアイドルには歌えないラブソングが存在する。11、12日に旧後楽園球場隣接の「TOKYO DOME CITY HALL」、14日にはNHK大阪ホールでコンサートを開催する。「キャンディーズ時代の曲も歌うことになるでしょう。私、今は普通でいられてますから」【川崎浩】

毎日新聞2019年6月 6日東京夕刊(2版)掲載 執筆記者:川崎浩

Jポップ   のテーマを含む関連記事