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読売新聞│配信日:2019年3月4日│配信テーマ:その他  

真正面から「ラブソング集」 伊勢正三 16年ぶり全新曲


 ◆「なごり雪」思わせる作も
 フォークグループ「かぐや姫」や「風」の活動で知られるシンガー・ソングライター、伊勢正三が新作「Re—born」(フォーライフ)を発表した。ライブにベスト盤発売と、精力的な活動ぶりからは意外だが、オリジナル作は16年ぶり。67歳の男が歌う、驚くほどストレートなラブソング集だ。(鶴田裕介)
 「年に応じて早くなるっていうじゃないですか。人生が。すごい速度で走っているんですよ」。気付いたら16年たっていたというのが実感だそう。これだけ時間をかけたからには「セルフカバーとかではなく、全部新曲で勝負したかった」。
 還暦を過ぎた年齢で、ラブソングに真っ正面から挑む。「そうじゃないと、色気がないですよ。音楽としての」。ラブソングは人生最後だろう、という思いで作った。スタジオ近くに部屋を借り、全ての時間を制作に費やすほどの力の入れようだった。
 カギとなったのは、2曲目に収録した「冬の恋」。「曲のでき方が(イルカのカバーでも知られる代表曲)『なごり雪』にすごく似てる。共通点は、まずサビが、瞬時にできたこと」。そして、曲の感じは同じくイルカに提供した「雨の物語」のようだ。「難しくないけれど耳に残るフレーズができた瞬間、あ、こんなだった、逃がしちゃだめだ、って思ったんです」
 「もしも今 一粒の時を戻せたら 何を望むの」と歌うフォークソングで、内容も「なごり雪」の続編に聞こえなくもない。意識はしていないというが「『なごり雪』の2人が年を取って会った感じなのかな」と否定もしない。別バージョンも収録し、思い入れの強さをうかがわせる。自らが誇る2曲に連なる「冬の恋」が自信となり、その勢いに乗って今作が生まれた。
 AOR(大人向けロック)、フォーク、フレンチポップと、多様な音楽性が噴出する。都会的なイントロで始まる「テレポーテーション」は、「宇宙の仕組みとは 愛なのかな…」と、量子力学から恋愛を読み解く異例の作風。短い言葉で感情を鮮烈に描き、言葉の強さを感じさせる。ラップにも初挑戦。「若い子が聴いたら『なんですかこの古くさい言葉』っていう、文学っぽい言葉をあえて入れた」
 実は2016年のインタビューで「次作の構想はラブソング」と言明していた。今回も「すぐ次に入りたい」と語っており、遠くない将来、さらなる新作が届くかもしれない。
 6月7日、東京国際フォーラムで公演。(電)0570・550・799。

読売新聞2019年2月21日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:鶴田裕介

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