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読売新聞│配信日:2019年2月11日│配信テーマ:洋楽  

「多様性」「女性」 カギに 「第61回グラミー賞」予想


 米国音楽界最高の栄誉とされるグラミー賞の授賞式が2月10日(日本時間11日)、ロサンゼルスで行われる。61回目。今回から主要4部門の候補数が、5から8に増え、より幅広い作品が「ノミネート作」として、話題になっている。注目株を紹介するとともに、音楽評論家の大友博さんと結果を予想してみた。(桜井学)
 ■主要部門の候補増加 
 前回、主要部門の女性候補者が少なかったことなどから批判が出た。今回は音楽界の持つ多様性をより反映させるべく、新たな会員を多数招き、人種や性別、年代などのバランスを改善しようと試みた。また、主要4部門の候補数を増やし、幅広い作品が注目されるようにした。
 「候補数が増えたことで、ビジネス的な面も含めて話題が広がればということでしょう。増やし過ぎると価値が下がるし、悩みどころだったと思う」(大友)
 ■ラッパー健闘 
 候補の顔ぶれを見ると、ラッパーの健闘が目立つ。ピュリツァー賞も受賞したケンドリック・ラマーやカナダ出身の人気者のドレイクが主要4部門中、3部門に名前を連ねる。2部門で候補となり「台風の目」と言えそうなチャイルディッシュ・ガンビーノもラッパーだ。「ディス・イズ・アメリカ」は「これがアメリカだ」と繰り返し歌い、銃撃シーンのある音楽ビデオも話題となった。人種差別や銃の存在といった米国の社会問題を浮き彫りにしているようだ。
 ■注目のカーライル 
 女性陣では主要4部門中、3部門で候補になっているブランディ・カーライルが目を引く。楽曲「ザ・ジョーク」は、落ち着いた雰囲気の歌もので、自分らしい生き方の大切さを説く。「(米国の様々な伝統音楽を融合させた)アメリカーナの部門にもノミネートされている。正統派のシンガー・ソングライター」(大友)
 アルバム部門に名前の挙がったケイシー・マスグレイヴスとジャネール・モネイは評論家筋の支持を集めた。ジャネールの作品はプリンスの影響を感じさせる。新人ではR&Bシンガー、ハーが楽しみな存在だ。
 日本でも人気のレディー・ガガは映画「アリー/ スター誕生」のサントラ収録曲でノミネート。音楽業界を描いた映画で、投票者の共感を得られそうだ。
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 授賞式の模様は2月11日午前9時から、WOWOWが同時通訳で生中継する。同日午後10時からは、字幕付きの放送もある。
 
 ◆「体で感じる音 狙った」 ハー作品担当 ミキ・ツツミ 
 日本関連の候補者も注目される。「最優秀アルバム賞」などの候補となったハーの作品でサウンド・エンジニアを務めたミキ・ツツミ(堤幹成)に、メールでインタビューした。
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 「正直言って信じられません。彼女の成長、人気ぶりを見ていて、最優秀新人賞などにはノミネートされるかな、と思ったのですが、最優秀アルバム賞とは。音楽が愛されているからこそ、ここまで来られたのだと思います」
 ミュージシャンの理想のサウンドを作るため、音の加工や調整、録音を行うのがエンジニアの仕事だ。「彼女の声を中心に、ハッキリ出しつつも、残響やビートを生かし、体で感じられるサウンドを狙いました。ファンが一番共感できるのはリリック(歌詞)だと思うので、それがしっかり届き、歌詞が伝える感情を体験してもらえるような音にしたかったんです」
 1976年、横浜生まれ。米国の大学を卒業後、いったんはフロリダ州で就職した。しかし、音楽に携わりたいと仕事をやめサウンド・エンジニアの専門学校に入った。その後、ニューヨークのスタジオで仕事を始め、友人の誘いで人気歌手、アリシア・キーズのスタジオで働いた。ハーとの付き合いは長く、「ファミリー、妹みたいな感じ」という。
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 ほかにチャイルディッシュ・ガンビーノの「ディス・イズ・アメリカ」の音楽ビデオで、ヒロ・ムライ(村井邦啓)監督が最優秀ミュージック・ビデオ賞にノミネートされた。ムライの父は「翼をください」などで知られる作曲家・村井邦彦。ビデオはこれまでにユーチューブで4億7000万回以上視聴されている。
 
 〈グラミー賞〉
 ミュージシャンやプロデューサーなどの音楽関係者で組織する米国「レコーディング・アカデミー」会員の投票で年に1度、決定する。ロックからクラシックまで幅広いジャンルが対象で、今回は84部門で競われる。主要4部門のうち、レコード部門は個別の曲が対象。楽曲部門は作詞・作曲者に賞が贈られる。

読売新聞2019年1月31日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:桜井学

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