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毎日新聞│配信日:2018年12月31日│配信テーマ:その他  

<Interview>大江千里 音楽の美しさ見つめ 35周年、5都市でツアー


 シンガー・ソングライターの大江千里が、35周年を迎え、現在は本職ともいえるジャズピアノのソロで、自身のヒット曲を演奏した「Boys&Girls」(ソニー)を発表。1月半ばからツアーを行う。

 大江は、1983年「ワラビーぬぎすてて」でシングルデビュー。凝った作りだが、軽やかで明るい曲調は広く愛され、90年のアルバム「APOLLO」でオリコンチャート1位を獲得、Jポップのスターとなった。しかし、音楽に悩み始めた2000年代、子供の頃から夢だったジャズピアニストの道に進むことを決心。07年末からニューヨークで本格的に学び、12年にアルバム「Boys Mature Slow」でジャズデビューを果たした。

 本作は「アメリカのライブのアンコールで自分の曲を弾いた時、驚くほどの大きな拍手をもらった。自分でも『まさか!?』という状況で、そこから始まった」と言う。言葉で言えば「ピアニスト大江がポップスライター大江をジャズで表現してみよう」という企画だが、いざやり始めると、自分の曲のアレンジは簡単ではなかった。

 「僕の中にいる『作家の大江』が文句を言うんです。数カ月間にっちもさっちもいかなくなった」と白状。理由は「選んだ曲があまりにも明快なポップス」だから。ただ「新しいジャズの名曲を発見したような喜びや単に音楽としての美しさを共有できれば、と考え直して苦悩のトンネルから抜け出せた」と苦労を語る。「ヒットしたポップスには絶対変えちゃいけない部分がある。それが、パッと見通せるようになった」のがアクセルとなった。

 アルバムには、「Rain」「ワラビーぬぎすてて」「格好悪いふられ方」「十人十色」「BOYS&GIRLS」など代表曲と新作2曲の9曲が収められ、限定盤には歌の入ったオリジナル7トラックが別CDでセットされている。ジャズで大江を知ったファンにも原点が楽しめる仕掛けである。

 そもそも「なぜジャズを」というのが、一般の疑問であろう。大江は答える。

 「ポップスの創作に疲れた90年代後半から、ニューヨークへ行って音楽学校の学生を見るたびに、ジャズへの夢を募らせた。47歳の頃、母や友人が亡くなり、人生を見つめる機会が一気に増え『後悔したくない』という思いが爆発した。学べる喜びの方が勝ったね」

 1月19日の名古屋を皮切りに、25日福岡▽26日仙台▽28、29日東京▽30日大阪で、記念ツアーを行う。【川崎浩】

毎日新聞2018年12月25日東京夕刊(2版)掲載 執筆記者:川崎浩

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